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ステージレビュー

ジャンルの枠を超えた新感覚のダンスステージ

2011年11月4日

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写真:「BOYZ BALLET FANTASY 2011 Loving SWAN LAKE」公演より=撮影・平賀正明拡大「BOYZ BALLET FANTASY 2011 Loving SWAN LAKE」公演より=撮影・平賀正明

写真:「BOYZ BALLET FANTASY 2011 Loving SWAN LAKE」公演より=撮影・平賀正明拡大「BOYZ BALLET FANTASY 2011 Loving SWAN LAKE」公演より=撮影・平賀正明

 バレエをはじめ、タップ、ストリートダンスと、さまざまなジャンルのダンサー15名による異色のダンスステージ「BOYZ BALLET FANTASY= ボーイズ・バレエ・ファンタジー 2011 Loving SWAN LAKE」が10月26日から30日まで、銀河劇場で上演された。(フリージャーナリスト・中本千晶)

 冒頭シーンでは、バレエのレッスン場。ダンサーたちが、バーにつかまって黙々とプリエの練習に励んでいる。生粋のバレエダンサーから、「プリエなんて日頃やったことないんですけど」というジャンルのダンサーまで混じっているのが面白い。このなかに、何だか冴えない感じ(?)のダンサーがひとり。それが中河内雅貴だ。彼が、さまざまなジャンルのダンスシーンに触れ、ときに迷い、苦悩しながらも、次第にダンスの素晴らしさに目覚めて行くというストーリーである。

 中河内をダンスの世界にいざない、リードしていくのが西島千博だ。冒頭場面のレッスン場では先生役として、「オペラ座の怪人」のマダム・ジリー風の棒を手に登場。その後もさまざまに姿を変えて、ときに踊りの神のごとく彼を導き、またあるときは悪魔のごとく翻弄していく。中河内と2人で踊るシーンは、妖しく美しい。

 ダンサー陣はバレエの世界より東文昭、長澤風海、北川優佑、アクリ士門、佐野朋太郎。タップの世界より清水夏生と長澤仙明(バレエチームの長澤風海の弟)。ストリートダンスの世界からは、「DIAMOND☆DOGS」の森新吾と和田泰右、それに、子どもながら大人顔負けのリズム感で石井伶治。多彩な顔ぶれがそろった。

 紅2点として、宝塚時代、ともにダンサーとして知られた桐生園加、舞城のどかの2人が加わり、男性顔負けのエネルギッシュな踊りを見せる。また、歌い手として宮下龍之介。天空の女神(ミューズ)および地上の天使(エンジェル)として、中河内を導く役回りだ。

 1幕は、バレエに始まりヒップホップ、ジャズ、タップ、タンゴ風、フラメンコ風とさまざまなジャンルのダンスシーンがめまぐるしく展開。各ジャンル出身のダンサーたちが競い合うかのように踊るのが迫力だ。

 2幕では、バレエで知られる曲を、アレンジしていく方式。有名な「4羽の白鳥の踊り」を、最初は男性バレエダンサーが正統派な振りで踊り、その後、タップやストリートダンスで踊ってみせるのが何ともコミカル。圧巻だったのは、ラストの「ボレロ」で、各ジャンルのダンサーたちが踊り継ぎ、最後は総踊りとなる。1幕の拡散に対して、2幕で収束していくという流れだ。

 宝塚退団後の初舞台として注目の桐生園加が、「女子」としてのダンスを初披露。やはりラストの「ボレロ」でソフト帽を片手にパンツの衣装で登場したシーンが一番、水を得た魚のよう。バレエだのジャズだのタップだのヒップホープだのというジャンルに加えて、「男役のダンス」というジャンルが確かに存在するのだと感じさせる踊りっぷりだった。やはり、ソフト帽を手に取らせれば、宝塚の男役出身者の右に出る者はいない。

 ジャンルの枠を超えた「踊ること」の素晴らしさを感じさせると同時に、各ジャンルならではの魅力を再発見することもできる。ダンス好きには必見の一作だ。

 どのジャンルにせよ、踊る人たちは、皆美しい…それはきっと、舞台で踊る姿の背後に、自分を律するストイックな時間の積み重ねが見えるからではないだろうか? 観終わったあと、ふと、そんなことを考えさせられた。

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)。今年10月に「なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか」(東京堂出版)を出版。Astandスターファイルでも「ヅカナビ」連載中。


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