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ステージレビュー

駆け抜けるような展開、宝塚「オーシャンズ11」開幕

2011年11月14日

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写真:宝塚大劇場公演「オーシャンズ11」より=撮影・岸隆子拡大宝塚大劇場公演「オーシャンズ11」より=撮影・岸隆子

写真:宝塚大劇場公演「オーシャンズ11」より=撮影・岸隆子拡大宝塚大劇場公演「オーシャンズ11」より=撮影・岸隆子

 宝塚星組公演「オーシャンズ11」が、11月11日、宝塚大劇場で初日を迎えました。2002年に公開され、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットなど豪華スターが競演して話題を呼んだ人気映画を、どのようにして宝塚版ミュージカルに仕上げるのか…小池修一郎氏のあらたなる挑戦と、トップスター柚希礼音(ゆずき・れおん)さん率いる星組メンバーの活躍に期待が高まる舞台となりました。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 物語は、刑務所帰りのダニー・オーシャンが10人の仲間とともに、難攻不落なカジノの金庫破りに挑むというもの。さらにダニーには、そのカジノを牛耳る男ベネディクトに奪われた妻テスを取り戻すという個人的、かつ彼にとって最も重要な目的もあった――。映画では金庫破りの過程がメインとなったサスペンス・アクションでしたが、宝塚ではさて…!?

 ダニーはもちろん柚希さん。ちょっと崩れた感じの渋い男を、ジョージ・クルーニーに負けず劣らずニヒルに演じています。安定した実力に経験を重ね、堂々たるトップスターとして今、最も輝いている時期ではないでしょうか。オープニングは監獄服で銀橋に登場し、一転、タキシード姿に変身してラスベガスの街で華麗に踊るという、ダンスの名手、柚希さんの魅力を活かした演出で、エキサイティングな物語が始まる予感に胸がワクワクします。

 テス役の夢咲ねね(ゆめさき・ねね)さんは、ダニーに愛想を尽かしながらも、揺れる女心を巧みに表現。柚希さんとも息がピッタリあっていて、もはや‘最強コンビ’と言えそう。

 冷酷非道にラスベガスを仕切り、テスをも手に入れようとするベネディクトを演じるのは紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん。映画ではアンディ・ガルシアが演じた重厚な役柄ですが、若い彼女なりのスマートさで独自のベネディクト像を作り上げています。これまでにない大人の難役に挑戦する紅さんにとって、この公演はターニングポイントとなるかも?

 天才詐欺師ダニーが服役を終え、仮釈放となったその日、届けられたのは妻テスからの離婚届。ラスベガスのホテル王ベネディクトに見いだされ、ショースターになるのだという。ダニーはショックを受けつつ、ある計画を実行しようと考えていた。ホテルの金庫に眠るカジノの収益1億5000万ドルを奪うという壮大な計画だ。ベネディクトにひと泡吹かせてやりたい! ダニーは昔馴染みのラスティ―(涼紫央/すずみ・しお)とともに、早速、仲間を探しに街へと飛び出した――。

 金庫破り計画において、ダニーがプロデューサーなら、ディレクターといった立場のラスティ―を演じるのが涼さん、髪から衣装まで全身金色に輝いていて、ますます個性的に。映画のブラッド・ピットのスター風味なイメージとも重なります。

 最強のセキュリティを破るためには、スペシャリストたちの協力が欠かせない…ということで集められたのが、ディーラーのフランク(夢乃聖夏/ゆめの・せいか)、ハッカーのリビングストン(美弥るりか/みや・るりか)、スリのライナス(真風涼帆/まかぜ・すずほ)、詐欺師のソール(未沙のえる/みさ・のえる)など、各方面のエキスパート。

 仲間たちを紹介するシーンは、それぞれにきちんと見せ場があります。夢乃さんは濃くて熱〜い持ち味をこれでもかと押し出し、美弥さんはキュートさをフルに発揮、真風さんのちょっと情けない坊ちゃんキャラ、ジャグラーのイエン(鶴美舞夕/つるみ・まゆう)の俊敏な動きなど、隅々まで目が離せません。こうして仲間が11人そろって「オーシャンズ11」が完成! 1幕終わりに全員がビシッと並んだ姿は壮観です。

 ベネディクトの寵愛を受け、歌手として成功しようとするテスに対し、白華れみ(しらはな・れみ)さん演じるショースター、ダイアナが嫉妬の炎を燃やすのも面白くて、映画にはない役ですが、白華さんがなかなかの怪女(?)を熱演、こちらも見逃せません。

 金庫破り計画と同時に進行する、ダニーの‘テス奪還計画’は、やはり今回の核となる部分でした。2人が出会った頃の思い出話や、今も揺れる思いなどがロマンチックに彩られ、ここへベネディクトを絡めた三角関係が加わり、映画とは違った表現で恋愛模様がじっくりと描かれています。ベネディクトの強引なホテル展開にエコロジーを利用したり、恋愛をアダムとイブに例えているところや、2幕が開いてすぐの3人による幻想的なシーンなど、宝塚ならではの演出もたっぷり。

 金庫破りのシーンは駆け抜けるように描かれるのですが、地下鉄が到着して乗客が出て来る映像に驚かされたり、最後には大掛かりなマジックも登場するなど、場面がくるくる展開して行き、見どころ満載であっという間に時間が過ぎて行きました。

 この公演で、専科の未沙のえるさんが退団します。泣かせたり笑わせたり、長年、巧みな演技で芝居を引き締めた未沙さん最後の舞台であることも、忘れずにお伝えしたいと思います。

 映画を観ても観ていなくても楽しめる、宝塚版「オーシャンズ11」。子どもからお年寄りまで、家族みんなで、この秋、宝塚デビューするのにぴったりかもしれません。

◆「オーシャンズ11」
《宝塚大劇場公演》2011年11月11日(金)〜12月13日(火)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ
《東京宝塚劇場公演》2012年1月2日(金)〜2月5日(日)
詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コムに「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。


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