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ステージレビュー

哀しさの中に不思議な明るさ、関西発の舞台「有毒少年」

2011年11月18日

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写真:cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦拡大cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦

写真:cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦拡大cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦

写真:cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦拡大cube presents 『有毒少年』 CBGKシブゲキ!! ゲネプロ写真=撮影:引地信彦

 関西発、注目のダークファンタジー「有毒少年」が、9月に渋谷でオープンしたばかりの新劇場「CBGKシブゲキ!!」にて15日、初日の幕を開けた。作・演出を手がけるのは、演劇ユニット「ピースピット」を主宰する末満健一だ。(フリージャーナリスト・中本千晶)

 この作品は、2003年に大阪で初演されているものだ。その後、2010年にも大阪で再演。それが今回、東京では初の上演となる。キャストもこれまでは関西の劇団の俳優主体であったのが、今回は「テニスの王子様」で知られる木戸邑弥、「ロミオ&ジュリエット」で一躍注目を浴びた昆夏美をはじめ、東京で活躍する役者が顔を揃える。末満自身も「まるで自分の分身のような、強い思い入れのある作品」、そして「東京にはあまりないタイプの芝居かも」と語る作品である。

 物語の舞台は、人類が滅亡しかかった未来の、最後の都市「ヘブンパレス」。そこで、幽霊と呼ばれる男(六角慎司)と、読書家と呼ばれる女(三倉茉奈)が、15年前のことを回想している。

 かつて、街の片隅のシェルターに、「有毒少年」と呼ばれるひとりの少年(木戸邑弥)が、ひっそりと生きていた。彼は、先天性の免疫異常のため、毒に満たされた環境でないと生きて行けないのだ。いっぽう、ヘブンパレスの大公の娘(昆夏美)は「無毒少女」と人々から呼ばれている。彼女は先天性の免疫不全のため、無菌の環境でしか生きて行けない。このため、幼い頃から無菌室に閉じ込められて生きてきた。

 だが、物語を引っ張るのは、むしろ2人を取り囲むユニークなキャラクターたちだ。ふとしたことから有毒少年と心を通わせ、「花を見てみたい」という彼の望みを叶えてやるべく奮闘する、お茶目で気のいい怪盗「蝙蝠(こうもり)」(姜暢雄)と、その相棒の「黒猫」(丸尾丸一郎)。団員がみんな辞めてしまったサーカス団の団長「蠅男」(竹下宏太郎)と、唯一残った「ピエロ」(伊与勢我無)。持ち前の記者魂で、街を覆う秘密を追い続ける記者の「石帽子」(小松利昌)と「時計兎」(上田結)、などなど。そして、なぜか深い罪の意識にさいなまれつつ、森の奥にひっそりと住む「魔女」(シルビア・グラブ)が物語の鍵を握る。

 ミュージカル風に歌って踊るシーンもあり、そこでは皆が役の衣装のままで、でも役を離れて、群衆を演じるのも面白い。凝ったデザインの衣装や、音楽も、ミステリアスな雰囲気をさらに盛り上げる。

 やがて、いつしか互いの存在を知り、その孤独ゆえに強く惹かれ合う「有毒少年」と「無毒少女」。そして、ついに2人が出会ったとき、この街を覆っている恐ろしい秘密が解き明かされる…。

 こう書くと、いかにもシリアスな物語のようだが(そして実際そうなのだが)、そのいっぽうで、関西仕込みの笑いも満載。初日開けたばかりの東京の客席は最初、その混在具合に多少戸惑っている風にも感じられたが、それこそが末満ワールドなのだろう。ほどなく慣れて、楽しく笑っているうちに、やがて物語にぐいぐい引き込まれ、最後は思いも寄らぬ展開に圧倒されてしまう。

 とても哀しい物語である。にも関わらず、ラストシーンでは、ひとすじの力強い希望の光を感じさせる、不思議な力を持った作品であった。

◆「有毒少年」
《東京公演》11月15日(火)〜26日(土) CBGKシブゲキ!!
《大阪公演》11月29日(火)〜30日(水) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
詳しくは、CUBE Group公式サイトへ

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)。今年10月に「なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか」(東京堂出版)を出版。Astandスターファイルでも「ヅカナビ」連載中。


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