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ステージレビュー

三島由紀夫の禁断の恋を美しく、宝塚バウ「春の雪」

2012年10月16日

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写真:松枝清顕役の明日海りお=撮影・岸隆子拡大松枝清顕役の明日海りお=撮影・岸隆子

 月組バウ・ミュージカル「春の雪」が、バウホールで10月11日初日を迎えました。原作は、三島由紀夫の長編小説「豊饒の海」四部作の第一巻「春の雪」。明治〜大正時代を背景に、若さゆえの葛藤に苦悩し、禁断の恋におぼれる青年を明日海りおさんが情熱的に、相手役となる美貌の伯爵令嬢を、研3の咲妃みゆさんがフレッシュに演じます。ミュージカルで表現する三島文学の耽美な世界。日本物らしい風雅な演出で酔わせ、実に見ごたえのある作品となりました。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 幼い頃より綾倉伯爵家に預けられた、松枝侯爵の嫡男・清顕(明日海)。共に育った2歳年上の令嬢・聡子(咲妃)との関係は、大人になるにつれ徐々に変化していく。聡子の気持ちは恋心へ。だが清顕は自尊心の高さから素直になれず、聡子の聡明さに対する複雑な感情から逃れられない。一時は心を通い合わせた2人だったが、殿下が聡子を見染めたことから、やがてそれは禁じられた恋という甘い地獄に姿を変えてしまい…。

 明治から大正にかけた時代のモダンな雰囲気が漂う中、外套をまとった明日海さんのガクラン姿の美しさに思わずため息がでそう。硬派なスタイルが甘い端正なマスクをより一層引き立てています。高慢で己の幼さや本心を認められず、絶えず何かに苦悩しているかのような清顕は、明日海さんにとってもやりがいのある役に違いないでしょう。幾度も激情していく様は迫力満点でした。

 一方、いつも悠然とし、清顕の心をかき乱す聡子は、咲妃さんがしっとりと好演。特に後半の、追い詰められながらも耐えしのぶ姿には涙を誘われます。

 清顕の親友・本多を演じる珠城りょうさんは、自らも青春の苦悩を抱えながら、直情型の清顕を大きく優しく包み込む人柄を誠実に。宇月颯さんは松枝家の書生役で、清顕のふるまいに心の中で強く反発する頑固者を、力強く演じていました。

 最初は清顕の強烈なキャラクターに戸惑うのですが、物語が展開していくうちにどんどん彼の魅力に引き込まれ、清顕と聡子のもどかしくもやるせない悲恋に胸を打たれ、美しい演出にとことん酔わされ…コンパクトな中にぎゅっと濃縮された世界は、これぞまさしくバウホール。秋の夜長、1冊の本を読み終えたような、深い感動がいつまでも胸に残りました。

【公演レポート全文はこちら】

◆「春の雪」
《宝塚バウホール公演》2012年10月11日(木)〜22日(月)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/294/index.shtml
《東京公演》2012年10月31日(水)〜11月5日(月) 日本青年館大ホール
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/295/index.shtml

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。


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