現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. ステージレビュー
  5. 記事

ステージレビュー

本場の風格漂う魅惑のコンサート「エリザベート」

2012年10月25日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」公演より=撮影:岸隆子拡大「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」公演より=撮影:岸隆子

写真:「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」公演より=撮影:岸隆子拡大「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」公演より=撮影:岸隆子

 ウィーン版ミュージカル「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」が大阪の梅田芸術劇場で10月22日まで上演された(東京公演は10月26日から)。1994年以来、エリザベートを演じ続け、出演回数世界一を記録するマヤ・ハクフォートをはじめ、日本でも活躍するマテ・カマラスやルカス・ぺルマンなどウィーンから実力派メンバーが来日。本場のスターたちがドイツ語で躍動的に歌い、本場の趣そのままに熱演している。今回の日本公演でエリザベートを卒業するマヤの集大成でもある本作は、心の奥底から揺さぶられるような深い感動が味わえるステージだ。(フリーライター・岩瀬春美)

 オーストリアの歴史の転換期、孤高の王妃エリザベートの激動の人生を、“死”を擬人化するという大胆な発想を加えて描いた「エリザベート」。ウィーン初演から20年、これまで世界11カ国で上演を重ね、今では観客総数850万人を超える大ヒット作だ。海外での初上演は、日本。96年、宝塚歌劇団雪組の日本語版公演から始まり、宝塚歌劇や東宝で何度も上演されている。ウィーン版キャストによる日本での公演は、2007年以来5年ぶりだ。

 本作のタイトルには「コンサート」とあるが、1曲ずつ歌いつないでいくスタイルではない。ウィーン公演と同じ豪華な衣装とかつらでフルシーンを表現しながら、ライブ感たっぷりにミュージカル・ナンバーを全曲聴かせる。大がかりな舞台装置はなく、真正面には30人ほどのフルオーケストラが、一つの大きな島のように舞台中央に存在する。舞台空間はシンプルに、音楽と物語を際立たせた。

 タイトルロールのエリザベート役は、これまで千回以上もエリザベート役を演じ続けてきたマヤ・ハクフォート。マヤが歌うと場の空気が一変する。低音から高音まで澄み切った歌声は、心の底に響いてくる感じがするのだ。マヤが演じるエリザベートは、何があろうと屈せず、よりかからず、自分が信じた道を生きる女性。たとえ失意の中にいても、マヤが演じるエリザベートの放つ魂の輝きのようなものが伝わってきた。

 エリザベートを愛してしまい、彼女につきまとって死へと誘惑するトートを演じているのは、マテ・カマラス。本場オーストリアと母国ハンガリーでもトート役を演じているマテはこの夏、東宝版「エリザベート」に出演し、トート役を日本語で演じた。東宝版では迫力のある歌声でワイルドな印象のトートが全面に出ていたが、今作ではソフトで暖かい中低音を響かせ、影の存在として寄り添うイメージ。一方で、突然目をむいて本性をむき出しにする瞬間もあり、陰影深い。

 暗殺者ルキーニを演じているのは、ブルーノ・グラッシーニ。ブルーノが演じるルキーニは、一見、陽気に見える一方で怒りや冷徹さも秘める。それが表面化するのが、群衆と共に歌う「ミルク」だ。飢えた群衆が不満を爆発させ、ミルク缶を叩いて歌うシーン。エリザベートへ批判をあおるルキーニには、感情が凍りついたかのような怖さが感じられた。

 注目の楽曲は、クラシックをロック調の音楽と融合させ、現代的なテイストで躍動的だ。エリザベートのソロ「私だけに」はマヤの歌姫の貫禄を感じさせ、エリザベートとトートのデュエット「私が踊る時」は魂がぶつかり合うように歌う2人の姿に釘づけに。親子デュエット「僕はママの鏡だから」は皇太子ルドルフ役のルカス・ぺルマンの甘い高音が切なく響く。トートとルドルフのデュエット「闇が広がる」ではマテがぞっとするほどセクシーで、翻弄されるルカスが儚く美しい。トートと同じ格好をした死者たちが幻影のように複数登場するのもユニーク。舞台中央のオーケストラの演奏は、どこで何の音が出ているかが、目で追えるのも楽しい。

 マヤが演じるエリザベートは、人生のどんな局面においても自立して生きることを貫き通した。晩年は孤独も色濃くにじみ出るが、一本筋の通った生き様を見せて、清々しい。それは「『エリザベート』の重要なテーマでもある“自己実現”を、私はこの役で達成できました」と話すパンフレットのインタビューのマヤの言葉とも重なるように感じる。本場の風格が漂う魅惑のステージは、そんなずしりとした手ごたえを残した。

◆「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」
《大阪公演》2012年10月15日(月)〜22日(月) 梅田芸術劇場メインホール ※大阪公演は終了しています。
《東京公演》2012年10月26日(金)〜31日(水) 東急シアターオーブ
⇒詳しくは、「エリザベート20周年記念コンサート〜日本スペシャルヴァージョン〜」公式サイトへ http://www.umegei.com/elisabeth20/

《筆者プロフィール》岩瀬春美 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。シアトルの日本語情報誌インターン、テクニカルライター等を経て、アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当。2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。


検索フォーム

おすすめリンク

ミュージカル「愛と青春の宝塚」から生まれた元宝塚トップスター紫吹淳、湖月わたる、彩輝なお、貴城けいによる期間限定ユニット「T4」のシングル

元宝塚・月組トップスター、瀬奈じゅんのDVD作品「エリザベート2009」などをご紹介

映画・テレビ・舞台に大活躍の小栗旬さんの作品を集めました。

宝塚歌劇不朽の名作「ベルばら」関連もの、いろいろ揃っています

抜群の歌唱力と表現力で様々なジャンルの楽曲を歌いこなす元宝塚トップスター

扉絵の再現、名場面、名セリフ、お宝グッズ、アニメ、宝塚、史実が1冊に


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介