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ステージレビュー

似合いのトップコンビ復活 宝塚宙組『Paradise Prince/ダンシング・フォー・ユー』

2008年10月1日

  • 文:佐藤さくら/写真:岸隆子

写真『Paradise Prince』より

 宝塚歌劇の魅力の一つに、座付きの作家が普段からキャストと接する中で着想する当て書きがある。9月26日に宝塚大劇場で幕を開けた『Paradise Prince』(植田景子作・演出)は、その意味でまさに今の宙組の魅力を生かした作品。ロサンゼルスのアニメ制作会社を舞台に、若者の夢と焦燥感が、現代的美貌をもつ大和悠河と陽月華のトップコンビで明るく描かれる。LEDで映し出された“Paradise Prince”のアニメーションとキャストが一緒に踊るシーンも見どころだ。

 大和演じるスチュアートはモダンアート界の寵児。だが子どもの頃から描いてきた“Paradise Prince”をアニメーションにする夢を叶えるため、身元を隠してアニメ制作会社に就職する。そこへアルバイトに来ていた画家志望のキャサリン(陽月)と恋に落ちるが、彼をアート界に取り戻そうとする有名プロデューサーのアンソニー(蘭寿とむ)によって、キャサリンは窮地に陥ってしまう。

 筋立てをいえば、まことにシンプル。だが王子然とした大和が、富も名声をも投げ打ってアニメ作家を目指すスチュアートを演じるところに当て書きの妙がある。彼の姿は不器用なほどまっすぐ舞台に取り組む大和自身と重なるし、それはキャサリン役の陽月も同様。アンソニーの罠にはまり、苦しみながらも自分より恋人の夢を優先させることを決意する場面など、ひたむきに舞台を務める陽月ならではの説得力がある。歌唱力に課題が残るものの、このトップコンビの相性の良さがラストシーンの一幕に生きる。

 その他、謎のアニメオタク・ラルフ役の北翔海莉の安定感、アンソニーの秘書シャルルを演じた悠未ひろの思い切った役作りが印象に残った。

写真

写真 『Paradise Prince』より

             ※  ※  ※

写真『ダンシング・フォー・ユー』より

 併演は、グランド・レビュー『ダンシング・フォー・ユー』(中村一徳作・演出)。ミラーボールが回るオープニングからスパニッシュ、白タキシードのパリの場面、アラビア風の中詰め、ニューヨークの夜を表した黒タキシードの場面、そして黒燕尾服の男役の群舞など、宝塚らしさをキッチリと押さえた正統派のつくり。大和と陽月を中心にはじけるようなダンスとコーラスで魅せる。男役の色気をいかんなく発揮する蘭寿や、近ごろ存在感が増した七帆ひかると十輝いりすのほか、これが退団作でエトワールを務める和音美桜の美声が心地よい。

 骨折による休演のため8カ月ぶりの舞台復帰となった陽月は、初日挨拶で思わず涙。そんな彼女を見守る大和とキャスト陣を、観客の大きな拍手が包んだ。似合いのトップコンビがおくるハッピーなラブ・ストーリーと正統派のショー。シンプルで当たり前のようだが、それこそが観客にとっては、実に幸せなことなのだ。(ライター・佐藤さくら)

写真 『ダンシング・フォー・ユー』より

 ◆Paradise Prince 作・演出:植田景子
 ◆ダンシング・フォー・ユー 作・演出:中村一徳

《宝塚大劇場公演》:9月26日(金)〜11月3日(月)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)/《東京宝塚劇場公演》:11月21日(金)〜12月27日(土)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ


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