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インタビュー

匂宮の光と影 宝塚月組・瀬奈じゅん

2008年10月31日

  • 取材・文:榊原和子/撮影:岸隆子

写真月組主演男役の瀬奈じゅん=岸隆子撮影(プロフィール)

 「源氏物語」の千年紀という節目の年に上演される『夢の浮橋』は、全54帖のうち最後の10帖である「宇治十帖」をアレンジしたもの。美しい女性・浮舟をめぐって、匂宮と薫の君が争い、それを嘆いた浮舟の入水によって物語は終わる。そんな愛の悲劇『夢の浮橋』で、主役の匂宮を演じる月組主演男役の瀬奈じゅんに、今回の作品への取り組みを聞いた。

憎めないプレイボーイ

── 「源氏物語」では、以前、夕霧を演じていらっしゃいましたね。
 花組時代の『源氏物語 あさきゆめみし』(01年)でした。
── 今回は匂宮ですが、どんなイメージを考えていますか?
 たとえば映画などでも匂宮が主役のものはほとんどないんです。あったとしても描かれかたがプレイボーイ的な部分を強調することが多いし、なぜそういう人になったのか詳しく書かれていないんです。それでどう演じたらいいのか作・演出の大野拓史先生にお聞きしたら、「プレイボーイでいろいろな女性を渡り歩いているけれど、それでもみんなから好かれている。その憎めない部分を出してほしい」ということでした。私はあくまでも大野先生の描かれる匂宮を演じたいと思っていますから、おっしゃることを頭において、匂宮の光と影を出していけたらと思っています。
── 浮舟への思いはどんなふうに解釈していますか?
 匂宮は紫の上に育てられていますから、光源氏のしていることで苦しむ紫の上を見ていますし、また紫の上が死んだあと抜け殻のようになってしまった光源氏も見ています。ですから匂宮は、人を愛することによってこういうふうに苦しむこともあるんだ、愛することでこういう姿になってしまうんだ、こういう罪も降ってくるんだ、という思いを抱いてしまうし、本当の恋に対して恐れを抱いてしまうんです。そのせいで深く人を愛することや深く関わるということを避けて生きてきたと思います。それが浮舟と出会って、覚悟を決めて、自分のもとに迎え入れたいと思う。そこまで愛した初めての女性が浮舟だったのだと思います。また、その始まりは、薫が浮舟を愛していると知ったから興味を持ったわけで、そんな人間くさい感情もうまく表現できたらいいなと思っています。
── 匂宮は好奇心が強い人かもしれませんね。それによって他人を傷つけてしまうくらいに。でもそういう人だからこそ、みんなが惹きつけられるのも分かるような気がします。
 そうですね。そういう匂宮の魅力的な部分を、うまく出していけたらいいなと思っています。

四季に重なる女性像

写真月組主演男役の瀬奈じゅん=岸隆子撮影(プロフィール)

── 「源氏物語」は永遠のベストセラーですが、なぜだと思いますか?
 読んでいると、日本の四季がいろいろな形で出てきます。登場する人たち、とくに女性の1人1人がみんな素敵なんですが、それぞれ四季にたとえられています。紫の上なら春で、明石の上は冬、花散里は夏とか。文のやりとりの中にも「出会いは冬の荒波の中だった」とか書いてあったり、女性に四季を重ねてその魅力を伝えているのが、とても日本的だし心を打つ部分だと思います。四季の美しさを大切にしているところが、この「源氏物語」が愛される要素の1つではないでしょうか。
── 確かにそうですね。四季は人生にも重なりますから。
 入学式があんなにワクワクするのは桜の花のピンクと無縁じゃないからでしょうね。梅の匂いとか、紅葉の色とか、冬の空気の冷たく乾いた感じとか、それは誰もが体で感じることで、全てが記憶にあるんですよね。たとえば恋愛小説を読んでいて、同じような恋愛経験がなければわかりにくいことでも、「季節は秋だった」という一言で情景が想像できて物語に入り込めたりしますよね。だから「源氏物語」の恋愛は、読んでいて共感しやすいし、感覚でわかる部分が多いんだと思います。
── 瀬奈さんもすごく四季に敏感ですね。
 それはたぶん犬を飼ってからですね。散歩に行くじゃないですか。そうするとそろそろ葉っぱが赤くなってきたなとか、緑がいっぱいだとか、花が咲き始めてきたとか、空気の匂いや感触も変わってくるし、四季の変化をすごく感じるんです。
── そういう日本的な美の世界を華麗に見せてくれるのが、この『夢の浮橋』ですね。そしてショーは『Apasionado!!(アパショナード)』で、念願のスペイン物ですね?
 スペイン物は最近のディナー・ショーでやってますから、念願というわけではないのですが、ラテンが大好きですし、久しぶりの藤井大介先生の作品ということもあって楽しみです。また1本物が続いていた月組が、久々に取り組むショーなので、ガンとパワーを出していけたらいいですね。
── 瀬奈さんは、タイトルの意味である「情熱の男」という通しキャラですか?
 いえ、「情熱の男」というのは一環したテーマではあるのですが、場面ごとにドラマがあって、いろいろなキャラクターとなって出てきます。
── 年末の公演でトリをつとめるわけですから、いちだんと張り切る月組メンバーの舞台を見せてもらえそうですね。
 今年の最後の公演ですし、締めくくりにふさわしい作品を作り上げたいですね。今年の夏は、博多座と日生劇場の2つに分かれて公演していたのですが、そこで培ったパワーが1つになったとき、どう作用するか。みんなでさらに研究しながら、集中してがんばりますので、ぜひ観にいらしていただきたいと思っています。

◆『夢の浮橋』 脚本・演出/大野拓史

◆『Apasionado!!(アパショナード)』 作・演出/藤井大介

《宝塚大劇場公演》:11月7日(金)〜12月11日(木)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ

《東京宝塚劇場公演》:2009年1月3日(土)〜2月8日(日)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ

☆瀬奈じゅん(せな・じゅん):4月1日生まれ、東京都出身。92年「この恋は雲の涯まで」で初舞台。花組に配属。05年、月組主演男役に就任。身長168cm。愛称「あさこ」。


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