『スカーレット・ピンパーネル』のショーヴラン役で大きな成長を見せた星組の柚希礼音が主演する『ブエノスアイレスの風』、東京公演は好評のうちに千秋楽を迎え、14日から宝塚バウホール公演が始まる。98年に月組の紫吹淳主演で初演された本作品は、アルゼンチンを舞台に、1人の男の生き方を描いた正塚晴彦の名作。タンゴが随所に盛り込まれ、名ダンサー柚希を久々に堪能できるのも見どころだ。稽古中の柚希に、最近の出演作を通して学んだことや、今回の作品への向き合い方をじっくり聞いた。
歌や踊りを封印して打ち込んだ芝居
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―― 前回の公演、『スカーレット・ピンパーネル』から1カ月もたたないうちに主演公演が始まるというのはたいへんですね。
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稽古期間がもっとあればとは思いますね。タンゴだけは、前回の公演中もショーヴラン役をやりながら、ずっと練習していました。ショーヴランを演じているときとは違う筋肉を使うので、筋肉痛になりました。
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―― タンゴは、昨年の『レビュー・オルキス』で本場であるアルゼンチン・コロン劇場バレエ団の芸術監督を務めるオスカル・アライス氏から指導を受けていますよね。
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確かに『レビュー・オルキス』は、全編タンゴをテーマにしたショーだったのですが、その時はあまり娘役さんと組んで踊るシーンがなかったんです。男役だけの群舞で踊ったりすることが多かったので、今回のように相手役と組んでタンゴを踊るのはほとんど初めてのようなものです。もともとタンゴには興味があって、タンゴを見に行くのも大好きなんですが、客席から見ていて、女の人がきれいに見えないとだめだな、ということをいつも感じていましたので、今回はうまくサポートをして、相手役の夢咲ねねが美しく見えるように踊ることが目標です。
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―― 前回の主演が昨年1月のバウホール公演、『Hallelujah(ハレルヤ) GO!GO!』で、その後は得意のダンスがメインの舞台があまりなかったと思うのですが、逆にステップアップをめざして勉強できた時期ではないでしょうか。
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下級生のころからバウ・ワークショップなども含めて何度か主演をさせていただきましたが、その後しばらく主演ではなく、誰かの下でじっくりお芝居の勉強をすることができる場を与えていただいたように思います。歌や踊りを封印して芝居に専念できたことで、芝居への取り組み方が変わりました。芝居のみできちんと舞台を成立させないといけないのに、歌や踊りにずいぶん頼っていたんだ、ということを苦しんで、苦しんで学んだという感じですね。
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―― 轟悠さん主演の『KEAN』のプリンス・オブ・ウェールズ役は、歌も踊りも一切ありませんでしたね。
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芝居の勉強になったのはいうまでもないのですが、ハプニングを自由自在に切り抜けていく轟さんを見ていて、自分もハプニングが起きても芝居を中断しないで柔軟に対応できるようになりたい、と思うようになりました。
たとえば、指輪を誰かが落としたとしたら、普通だったら下級生が拾って持っていくというところを、轟さんは「あ、こんなところに指輪が」と拾って相手に渡したりするんです。そのお芝居の中のワンシーンとしてお客様にはハプニングと感じさせない。安蘭けいさんや遠野あすかさんもお上手で見習うべき点が多いのですが、まだ自分ではできないんですよね。
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―― 昨年の巴里祭のように歌中心のショーやトークでもお客様を楽しませなければならないという新たな挑戦もありましたね。
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歌は下級生のときのような苦手意識もあまりなくなって今はとても楽しいんですけど、トークさえなければこんなに緊張しないのに、と思っていました。台本はあって話す内容は決めていただいていたのですが、4回あるショーで、毎回微妙に話す内容を変えたりしなければならないということが難しくてプレッシャーでした。
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―― 『スカーレット〜』では、安蘭さんのアドリブをアドリブで返す、ということにも努力をされていたそうですね。
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アドリブはもちろん打ち合わせ無しなので、毎回ショーヴランとして答えるのに四苦八苦でしたね。とにかく素の自分が出ないように、とがんばっていました。あまりエスカレートしていってその後のシリアスな場面に戻りづらくなってしまった時期もあったので、「けっこうです」という本来のせりふだけにしたりと、試行錯誤していました。
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―― 『スカーレット〜』のショーヴラン役は、大好評でしたが、これまでの積み重ねが花開いたという感じですね。
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演出の小池(修一郎)先生のおっしゃる通りに役作りはしていきました。小池先生は初めてご一緒しましたが、とにかく厳しかったです。ショーヴランとして、人をみくだすというか、誰も信用していない、という気持ちをまず作ってそこから表情を作りこんでいきましたが、外国の俳優の表情をビデオで研究して、鏡を見ながら練習しました。
ニコラスとして生きる