古典の名作「源氏物語」から「宇治十帖」の部分をアレンジした宝塚月組公演『夢の浮橋』は、匂宮と薫の君、そして浮舟の愛を中心に描いた宮廷絵巻。この作品で、主演・瀬奈じゅんを支える遼河はるひと桐生園加は、キャリア十分の男役。そして最近の舞台で一段と目覚ましい活躍を見せてくれてもいる。その遼河と桐生に、今回の『夢の浮橋』の役柄と、ショー『Apasionado!!』への取り組みを聞いた。
心弱い兄と新衛門さん
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── まず、『夢の浮橋』での役柄を教えてください。
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遼河はるひ 私は匂宮(瀬奈じゅん)の兄の二の宮を演じます。祖父が光源氏で母が明石の中宮(明石の上の娘)なのですが、東宮になるまえに失脚させられてしまうんです。
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桐生園加 私は時方という役です。匂宮と乳母子(めのとご)で、いわゆる乳兄弟です。匂宮のお供をしていますので、瀬奈さんといつも一緒に出ているという感じです。
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── 遼河さんの二の宮は宮廷場面が多いのですか?
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遼河 そうでもないです。宮廷は匂宮と話すところくらいですね。二の宮には紅梅の中の君という恋人がいて、蘭乃はなが演じているのですが、その紅梅と逢い引きしているのを見つかって引き離されるんです。
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── ちょっと色っぽい場面もありそうですね。桐生さんはそういう場面は?
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桐生 まったくないです(笑)。ドジで間抜けで、当て書きかと思うくらいで(笑)。匂宮を助けに来たのに、女御にかなわなかったり(笑)、そういうイメージだと演出の大野(拓史)先生から言われました。
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遼河 アニメ「一休さん」で、一休さんにいつもついてくる「新衛門さん」みたいなキャラクターだと言われてるし。
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桐生 要するに空回りする人、みたいなことらしいんです(笑)。
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遼河 でもインパクトあるからいいんじゃない?
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桐生 ほんと?
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遼河 また出てきた!という印象がすごくあるから。
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桐生 匂宮に説教したり、調子がよくておっちょこちょいなところもあるけど、とにかく匂宮のことは心から思っていて、悪いと知りつつ浮舟と逢わせてあげたりするんです。
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── なかなかいい男ですね。二の宮はどんな人なのですか?
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遼河 弟の匂宮は光源氏を継ぐような天性のものを持っているのに、兄は存在感が薄いというか、心が弱いんです。「私はお前のように強くない」と言う場面もありますし。長男だから東宮になるべく育てられてきて、イヤなことも我慢してきたけど、好きな人ができたことで一気にそちらに傾いていってしまう。たぶん自分の気持ちがコントロールできなくなったんでしょうね。匂宮のように適当に抜きながら生きていけるタイプではないから思い詰めてしまって。そのうえ叔父の夕霧(磯野千尋)の権力闘争にも巻き込まれて、政治的にも苦しむことになるんです。
カラッと系プレイボーイ
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── 大野拓史さんの時代物は、男同士の思いを描いたものが多いのですが、遼河さんは『更に狂はじ』(00年)、桐生さんは『月の燈影』(02年)に出演していますね。この『夢の浮橋』も、そういうところがあるのでしょうか?
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遼河 先生は「恋とか愛とかのロマンではなく、邪(よこしま)な源氏物語になる」とおっしゃっていましたが、その意味は、浮舟との恋より匂宮と薫の君との関わりを見せたいのかなと。
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桐生 薫の君は霧矢大夢さんですが、ポスターのイメージ通り、2人の関係が主になると思います。
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── 対立関係として描かれているのですか?
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遼河 対立にいくかなと思ったら、意外といかなかったりするよね。
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桐生 そうですね。
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── 匂宮はプレイボーイということですが、たくさんの女性との関わりも出てきますか?
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遼河 それもドロドロしてなくて、わりとカラッと系のプレイボーイで、コメディとまではいかないんですけど、曲のナンバーも軽いのがあったり。
ちょっと変わった存在なのが、城咲あいが演じる小宰相の君という女性で、原作の登場人物をモチーフにして、新しく描かれたキャラクターなんです。
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桐生 その小宰相が匂宮を外に連れ出して、民たちの生活を見せるんです。
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遼河 そこの傀儡(くぐつ)たちのナンバーは、けっこう長い見せ場になっています。
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── 言葉は現代風なのですか?
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桐生 普段の会話はそうですが、昔の言葉や宮中での言葉などは難しいですね。
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遼河 それに人物関係が複雑で。薫は源氏の息子で、匂宮は源氏の孫でとか。そういうものを頭に入れて観にきていただけると、より楽しめると思います。
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桐生 私は花組時代に『源氏物語 あさきゆめみし』(00年)に出ていた経験で、ある程度は系図が頭に浮かぶのですが、やっぱり(人物関係がわかっていると)面白さが違うと思います。そういえばこのあいだ宇治の「源氏物語ミュージアム」に行ってきたんです。
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遼河 そうそう、上級生6人くらいで行きました。ちょうど「源氏物語千年紀展」をやっていて、いろいろな展示物もあったりして、わかりやすかったですね。なんだか独特の雰囲気がありましたね。
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桐生 架空の物語なのに、この場所に浮舟たちが住んでいたとか、ここで入水したとか場所の案内もあって、まるで本当にいたような気になるのが面白いですね。
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── そんな「源氏物語」のどんなところが、おふたりには魅力的ですか?
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遼河 いろいろな意味で深いなと思います。現代のようにいろいろな情報が入ってこないから1人の人への思いも強くて。手紙というのも、自分のいちばん奥にある気持ちを書けるものだし、それに怨念とか生霊とかよく出てきますけど、念も強いんですよね。「源氏物語」はそういう人間の根本の感情を描いたものだから面白いんだと思います。
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桐生 私はマンガでしか読んでないんですけど、とにかく系図を見て、読んで、また系図に戻って、また読んで、みたいな(笑)。でもそれが読み解けたときは本当に面白いなと思いました。
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遼河 そのすごく雅な世界を洋楽でやってしまうのが、宝塚ならではのよさで。
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桐生 今回は琴も生演奏なんです。娘役と並んで男役も弾くので、そういうところも見どころです。
(⇒インタビュー(2)に続く)
宝塚月組公演『夢の浮橋』より=撮影:岸隆子
◆『夢の浮橋』 脚本・演出/大野拓史
◆『Apasionado!!(アパショナード)』 作・演出/藤井大介
《宝塚大劇場公演》:11月7日(金)〜12月11日(木)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)/《東京宝塚劇場公演》:2009年1月3日(土)〜2月8日(日)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)
☆遼河はるひ(りょうが・はるひ):2月2日生まれ、愛知県出身。96年「CAN−CAN」で初舞台。身長174cm。愛称「AHI」。
☆桐生園加(きりゅう・そのか):9月22日生まれ、神奈川県出身。98年「シトラスの風」で初舞台。身長167cm。愛称「そのか」。