ステージレビュー
2008年11月21日
宝塚月組公演『夢の浮橋』より=撮影・岸隆子
宝塚月組公演『夢の浮橋』より=撮影・岸隆子
トップコンビという“しばり”が前提のタカラヅカにおいて、トップ娘役が不在の作品を上演したらどうなるか。11月7日に宝塚大劇場で開幕した、源氏物語千年紀頌『夢の浮橋』(大野拓史作・演出)とファナティック・ショー『Apasionado!!』(藤井大介作・演出)は、6年後に100周年を迎える同劇団の、ひとつの可能性を示唆しているかのようだ。
芝居『夢の浮橋』の物語は、『源氏物語』から「宇治十帖」を取り上げて展開。宮中でも評判の「あだ人」、今上帝の第三皇子・匂宮(瀬奈じゅん)は、光源氏の末子・薫(霧矢大夢)が最近、女人を囲っているという噂を確かめに宇治へ向かう。そこにいたのは、薫が愛した亡き大君の異母妹・浮舟(羽桜しずく)。匂宮は兄弟のように育った薫のために喜ぶが、自分を大君の代わりと感じている浮舟の姿に、次第に想いが抑えられなくなり…。
舞台は照り映える紅葉や冴え冴えと浮かぶ満月、夕陽の中での宇治田楽など、日本の美しい四季を背景にさらさらと進む。だが日本物にありがちな退屈さはなく、匂宮が「色好みの兵部卿」と関係した女人たちに責められるコミカルなシーンや、意匠を凝らした華やかな直垂、メロディアスな楽曲の数々もあいまって一時間半を飽きさせない。
大野は恋愛と政治が複雑に絡み合う『源氏物語』の中でも、特に“恋愛ドラマ”としての側面に比重を置くことで、物語性を深めた。特定の相手役をもたない瀬奈の立ち位置と、恋人を定めず浮名を流す匂宮像が重なり、さらに瀬奈自身の持ち味である“空虚感を抱えたまま恋をする青年”とでもいった表情が加わって、匂宮の艶に説得力が出た。
一方の霧矢演じる薫は、対照的に辛抱役。初日はまだ模索が感じられたが、演技巧者だけにひと工夫を期待したいところ。その他、匂宮と対等に渡り合う小宰相の君役の城咲あい、傀儡(くぐつ)の場面で操り人形として光源氏の哀しみを表す萬あきらが印象に残った。
◆『夢の浮橋』 脚本・演出/大野拓史
◆『Apasionado!!(アパショナード)』 作・演出/藤井大介
《宝塚大劇場公演》:11月7日(金)〜12月11日(木)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)
《東京宝塚劇場公演》:2009年1月3日(土)〜2月8日(日)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)