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ステージレビュー

2つの星組公演(2)『ネオ・ダンディズム!III』

2008年12月5日

  • 文:榊原和子/撮影:岸隆子

写真「ネオ・ダンディズム!III」より=梅田芸術劇場、撮影:岸隆子

写真「ネオ・ダンディズム!III」より=梅田芸術劇場、撮影:岸隆子

安蘭と遠野のデュエットが胸に迫る
星組『ネオ・ダンディズム!III』

 安蘭けいが客席で歌う「all by myself」に、安蘭と遠野あすかが幸せそうに踊る「真情真美」に、会場全体が心を添わせていた。

 何度も観たショーなのに、マンネリ感はなく安心して参加できる楽しさへとつながっている。観客をうまく乗せてくれるのだ。それがこの作品の優れたところである。『ロマンティック・レビュー ネオ・ダンディズム!III』、テーマは“男の美学”だが、男役も女役もかっこいいショーである。

 今回の構成は、07年夏の博多座で上演した安蘭けいバージョンだが、いくつか変更がある。フィナーレのデュエット前に安蘭が歌っていた「ポゴシップタ─会いたい─」が、湖月わたるを送り出したときの「all by myself」に戻った。また「アディオス・パンパミーア」のシーンに、遠野が入っている。そんな変更もまた、安蘭・遠野の退団が決まった今は、演出家の優しさに思えて胸に沁みてくる。

 大勢の男役がチャイナ服で居並ぶオープニングはいつ見ても豪華だ。安蘭がドラゴン模様の白チャイナで現れてソロが始まる。赤の遠野、紫の立樹遥、エスニックでかっこいいショーの始まりである。

 続く耽美なカサノヴァ風場面での安蘭や、遠野のバラの乙女は、クラシカルな美しさだ。にしき愛が率いるイギリスのヒゲ紳士たちは、美稀千種を先頭に、彩海早矢、天緒圭花、壱城あずさが楽しませてくれる。

 「アディオス・パンパミーア」の遠野は大胆に激しく踊って、本領発揮。安蘭のガウチョと遠野の間にちょっとした小芝居などもあってドラマ性がふくらんでいる。

 ヤング・ガイは、涼・立樹・彩海・夢乃・麻尋・壱城あずさが小粋にジャズを歌い、そこからおなじみ「キャリオカ」へ。男役だけの群舞から安蘭が中心になる女役たちの群舞への流れは、いつ見ても小気味よく洒落た場面だ。安蘭の歌も圧巻だが、このシーンはデュエットダンスも見せ場で、涼・立樹や百花沙里、琴まりえを中心に、若手男役の彩海・夢乃・麻尋・壱城なども活躍している。

 「恋する男はドン・キホーテ」は、涼・立樹の客席降りで湧かせてくれる。ここでキューティー8になっているのは梅園沙千、妃咲せあら、華苑みゆう、八汐ゆう美、白妙なつ、南風里名、花風みらい、優香りこという娘役たち。

 そしていよいよ出演者が全力ですさまじいパワーを見せてくれる「明日へのエナジー」。ゴスペルの歌手・安蘭のアカペラのソロから始まり、立樹・涼と歌い継ぎ、「ハレルヤ、ハレルヤ」と、終いには全員でシャウトする。そのエネルギッシュなコーラスとパワフルで弾むようなダンスは、何度見ても観客の感動と興奮を呼び起こす。10年前、宙組誕生時に演出の岡田敬二とともにこの場面を生みだしたのは、音楽の甲斐正人と振付の謝珠栄。今も宝塚に大きな力をもたらしてくれる人たちである。その才能が生んだ名シーンを全力で演じる安蘭以下33名1人1人の熱さに、会場全体から拍手が惜しみなく注がれる。

 その興奮のあとに遠野あすかが1人で登場、しみじみとショーの主題曲を歌う。澄みきった歌声は、吉崎憲司の作曲した主題曲のよさを改めて感じさせてくれる。

 ロケットはヴァイオレット・ローズの琴を中心に、ブラック・ローズの毬乃ゆいと初瀬有花、そして真っ赤なバラたちで賑やかに繰り広げられる。全国で待つファンには何よりも宝塚らしさを感じさせてくれるのがこのラインダンスだ。 

 そして、客席から聞こえてくる深い歌声の「all by myself」。安蘭けいが、まるで観客への感謝を直接手渡したいとでもいうように、客席通路をゆっくりと歩いていく。ファンにとってはひときわ胸に迫る場面である。そして本舞台に上がった安蘭を中心に繰り広げられる男役たちのボレロ、ダンディで美しく、このテーマそのものをまさに表現しているといっていいだろう。カゲソロの白妙なつの声も清々しく美しい。

 その迫力のボレロが、安蘭・遠野の「真情真美」の愛溢れる歌とデュエットダンスに変わる。カゲソロは花愛瑞穂。2人の息の合ったダンスに、これまでのコンビの作品を重なる。2年半というコンビの歴史がまもなく閉じられる、その最後の時にもこんなふうに寄り添って踊る姿を観たいと思う。

 2人の姿が消えると、琴まりえのエトワールがパレードのスタートを告げる。華やかな色の洪水のなか、次々に前に出てくる星組生34名。全員がツアーの疲れも見せずに輝いている。この笑顔、この楽しさこそが全国のファンが待っている“宝塚”なのである。

 全国を回って宝塚の魅力を宣伝する全国ツアーは、本当にハードなスケジュールだ。終演後にそのままバスで次の土地に移動したり、朝早い移動でそのまま劇場入りということも珍しくない。そのハードさのなかで体調を整えながら、現地の観客たちに華やかで楽しい舞台を送り届けてくれる生徒たち、その努力に敬意を表したい。

 とくに今回の星組版は、安蘭けい・遠野あすかコンビの最初で最後の全国ツアーとなっただけに、2人を頂点とする今の星組の充実ぶりを観られて幸せだった。同様に、脚本の不足部分を補いながら、精一杯の舞台を見せてくれた雪組・花組の全国ツアー組のがんばりも忘れられない。そのメンバー全員に、心からの感謝と大きな拍手を送りたい。「ありがとう。そしてお疲れさまでした」

⇒(3)「ブエノスアイレスの風」に続く

写真写真拡大「ネオ・ダンディズム!III」より=梅田芸術劇場、撮影:岸隆子

写真写真拡大「ネオ・ダンディズム!III」より=梅田芸術劇場、撮影:岸隆子


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