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ヅカ★ナビ!

強く妖しく咲き誇れ 宝塚月組『Apasionado!!』

2008年12月12日

  • 中本千晶

写真普段は揃いのエンビ服で格好よく決める宝塚歌劇団の男役たち=月組「Apasionado!!」より、撮影・岸隆子

 昨日、宝塚大劇場にて千穐楽を迎えたファナティック・ショー「Apasionado!!」は、さすが末尾に「!」がわざわざ2つもついているだけのことはあった。
 幕開け、小林幸子も真っ青の巨大豪華衣装に身を包んだ瀬奈じゅんの姿に客席がどよめいたかと思うと、スパニッシュの衣装に身を包んだ男女による熱い歌と踊りが繰り広げられる。

 大ベテラン萬あきらと磯野千尋が客席まで降りていき、かつてダンサーとしてショーで大活躍したころのふたりを知っているオールドファンをシビレさせる。
 観客をつぎつぎとアッと驚かせてくれるサービス満点のショーなのだ(年明け1月3日から東京宝塚劇場にて上演)。

 なかでも一番の見どころは、南国の花々と蜜蜂の王の絡みを描いた「第4夜 熱帯夜」だろう。
 とりどりの衣装に身を包んだ花々が、歌い踊りながら銀橋を駆け抜け、これでもかといわんばかりに美を競い合う。
 ところが、この花たち、やけに自己主張が強い!?
 そう、彼ら…いや彼女たちは、じつは月組の誇るイケメン男役7人(越乃リュウ、遼河はるひ、桐生園加、青樹泉、星条海斗、龍真咲、明日海りお)なのだ。

 博多座公演『ME AND MY GIRL』でジャッキー役を演じた龍真咲や、ショーの他の場面でも女役を演じている明日海りおなどは、「なるほど、確かにキレイよね」と思うけれど、それはあくまで予想の範囲内。
 むしろ、いつもは「男らしい」ダンスシーンが魅力で、女性姿にはなかなかお目にかかることができない遼河はるひ、桐生園加あたりのほうが見応え十分。それは一種の「怖いもの見たさ」なのかもしれない。
 組長の越乃リュウに至っては、黒の衣装に赤毛でバッチリ決め、若手にはかもし出せないアダルト路線で迫ってくる。
 いつもの男役姿とのギャップが一番大きかったのは、金髪の色っぽい西洋風美人に大変身の星条海斗だろう。青樹泉もキュートで可愛らしかった。

 そして、トリを飾るのが月組二番手男役の霧矢大夢。蘭の花オルキデアに扮した霧矢が、蜜蜂の王の瀬奈じゅんとともに、ノリノリで歌い踊るのだ。
 ウインクあり、投げキッスありのラブラブぶりで、まるで、「女」に戻った自分をめいっぱい味わいつくそうとしているかのよう。

 とにかくこの場面、「『彼女たち』はじつは男役」ということを知らないと、その楽しみも半減してしまう。それどころか、「タカラヅカの娘役って意外と逞しい人が多いのね」と誤った理解をしてしまう。
 タカラヅカ初体験の人は、気をつけてご覧になってください。

 今回ほど大々的ではないにせよ、男役に女役をさせる場面、タカラヅカのショーでは意外と多い。ファンもこういう場面が好きなのだ。
 ファンは、「男役の○○さん、女になったらこうなんだ!」とまず驚き、「でも、もともと美人なんだから、女になってもキレイで当然よね」と胸をなで下ろす。
 男(役)としての○○さんと、女性としての○○さん、2つの視点から楽しめるというわけだ。こういう場面だらけだとシツコイ(?)が、ちょっぴりあるとショーをより美味しくするスパイスのような場面である。

 もともと女性なのだから、女性が女性の姿をして何の不思議もないはずなのに、どうしても「女装」に見えてしまうのが不思議なところ。
 その理由は、ひとつには男役用のりりしい化粧のままであること、また、男役さんは日頃から娘役さんをリフトしたり、剣を振り回したりして鍛えているので、とくに腕から肩のあたりが逞しく鍛えられていることにあるのだろう。

 「女」でなく「女装」にみえてしまうのも、ひとえに日々の男役としての精進の結果なのである。(中本千晶)

レベル:
★★☆(中級編)
分野:
フラワーアレンジメント
対象:
オトメン男子の皆さんも是非。
ステップアップのための宿題:
花たちの名前はスペイン語で、ネグロロサ=黒薔薇(越乃リュウ)、ビオレタ=すみれ(遼河はるひ)、ラバンダ=ラベンダー(桐生園加)、クラベル=カーネーション(青樹泉)、ハスミン=ジャスミン(星条海斗)、ペンサミエント=パンジー(龍真咲)、トゥリパン=チューリップ(明日海りお)の意味になります。花のイメージを思い描きながら観てみると、よりいっそう楽しめるかも?

写真写真拡大熱帯の花に扮して踊っているのは実は月組の男役たちだ=月組「Apasionado!!」より、撮影・岸隆子

プロフィール

中本千晶
フリージャーナリスト。67年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。00年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。著書に『東大脳の作り方と使い方』『ひとり仕事術』『宝塚読本』『熱烈文楽』ほか。

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