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ステージレビュー

安蘭&遠野サヨナラは王道の演出 宝塚星組『マイ ディア ニューオリンズ/ア ビヤント』

2009年2月24日

  • ライター・佐藤さくら

写真星組『マイ ディア ニューオリンズ』より=宝塚大劇場、撮影・岸隆子

写真拡大星組『マイ ディア ニューオリンズ』より=宝塚大劇場、撮影・岸隆子

 2月は宝塚大劇場とバウホールで、好対照の2本。
 まずは星組、『マイ ディア ニューオリンズ−愛する我が街−』『ア ビヤント』(宝塚大劇場)から。トップコンビの安蘭けいと遠野あすかのサヨナラ公演だが、脂の乗りきった2人を上級生陣がガッチリと支え、さらに下級生たちが個性を競い合っている現在の星組に、余計な仕掛けは不要ということかもしれない。作・演出の植田景子(芝居)と藤井大介(ショー)は、退団公演としてのポイントを押さえた構成で仕上げてきた。

 『マイ ディア〜』の舞台は、アメリカ南部のニューオリンズ。1928年(現在)、ブラック・ミュージックのスターとなったジョイ・ビー(安蘭)が、久しぶりに故郷を訪れる。音楽ジャーナリストにヒット曲「スウィート・ブラック・バード」の由来を聞かれたジョイは、かつてプロのミュージシャンを目指していた頃の自分と、結ばれなかった恋人ルイーズ(遠野)との思い出を振り返る。

 文化と人種が多様に交じり合うニューオリンズの街で起こる恋、仲間たちとの別れ、音楽への夢。筋立てはやや安易な気もするが、冒頭、物思いにふけりながら、くわえタバコでピアノに向かう安蘭の表情を見ていると、すべてジョイの記憶の影のようにも見えてくる。安蘭はさりげない視線や身のこなしに大人の男の苦みと恋の哀しみを宿し、ただ立っているだけで心情をこちらに伝えてくる。“男役”として、ひとつの頂点を示したと言っていいだろう。ラストで大コーラスをバックに「愛する我が街」を歌い上げるシーンは、宝塚を去る安蘭自身の姿と重なり、胸に迫った。

 相手役の遠野もアールデコの衣装がよく似合い、ジョイの“永遠の女性”にふさわしい匂うような美しさで魅せる。少なめの出番が残念だが、限られた場面で大人の女性の切なさを表現できるのは、遠野ならでは。また、ルイーズの弟でごろつきのレオナードには柚希礼音。暴力的な面と、姉を慕う少年のような顔との二面性が本来の持ち味にはまっているが、最近めきめきと力をつけている柚希だけに、役不足の感もある。

 続いてショー『ア ビヤント』。同じく退団者の立樹遥、星風エレナ、和涼華らに見せ場があり、宝塚特有の温かさを感じる展開。中詰めで遠野メインの大フレンチカンカンが盛大に繰り広げられた後は、楽屋の鏡の前で、舞台への想いを歌う安蘭の場面に。にぎやかさの後にふと訪れる静寂のなかで、退団公演の寂寥感をにじませる演出が見事。安蘭と次期トップ柚希との男役同士のダンスや、フィナーレでの黒エンビの安蘭と白ドレスの遠野によるデュエットダンスなど、全編まさに王道の演出だ。手練の技でサヨナラ公演を盛り上げた藤井の手腕を称えたい。

 同公演は3月9日(月)まで、兵庫県・宝塚大劇場にて上演。その後3月27日(金)から4月26日(日)まで、東京宝塚劇場にて。

写真写真拡大星組『ア ビヤント』より=宝塚大劇場、撮影・岸隆子

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