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ステージレビュー

ゲームの見せ場も恋愛ドラマも 宝塚宙組『逆転裁判』

2009年2月24日

  • ライター・佐藤さくら

写真宙組『逆転裁判』より=宝塚バウホール、撮影・岸隆子

写真宙組『逆転裁判』より=宝塚バウホール、撮影・岸隆子

 ゲームメーカーのカプコンとの初コラボで話題を集めているのが、宙組『逆転裁判−蘇る真実−』。累計320万本を売り上げている同名の人気ソフトシリーズが原作だ。見どころは、主人公の熱血弁護士フェニックス・ライト(蘭寿とむ)と、ライバルの天才検事マイルズ・エッジワース(七帆ひかる)の、息づまる法廷バトル。そこに舞台版のオリジナルである、フェニックスの元恋人で殺人事件の被疑者レオナ・クライド(美羽あさひ)が加わり、法廷と恋愛の両方が並行して物語は進行する。

 内容は現実の裁判に倣うものではなく、シリアスなサスペンスものというよりは、個性的なキャラクターたちが証拠品を集め、尋問し、法廷バトルで敵側の矛盾を突いていくというエンタメ色が濃いのは原作通り。原作の大ファンという脚本・演出の鈴木圭は、ゲームと同じBGMとSE(効果音)を使い、証拠品を挙げるときに対象をスクリーンに映し出すなどして、原作のもつ面白みを舞台上に再現してみせる。アニメのオープニングのような映像が流れ、その後ろからキャストが登場する場面など、まるで人間でゲームをやっているかのような感覚になるのが面白い。

 蘭寿はそんな“キャラ設定”をクリアしつつ、一方で、原作にはない恋愛の場面ではリアルな人間らしさも表さなければならず、役づくりはさぞ難しかったのでは。だがキメゼリフの「異議あり!」で見せる鋭い表情と、本来の吸引力を発揮する恋愛パート、その両方で観客を楽しませてくれたのはさすが。本心を隠して法廷に立つレオナ役の美羽も、硬い表情で真実を隠していた前半から、最後に身の潔白が晴れて本来の姿を取り戻すまでの推移が明瞭。オリジナル人物という難しい役どころを自分のものにしていた。また今回のハマり役といえば、エッジワース役の七帆。法廷では低く響く声で主人公と互角に渡り合い、同時に、神経質そうに指をトントンと叩く仕草などで原作そのままの人物像を表現。改めて実力を見せ付けた。

 熱狂的ファンを多く抱える原作だけに、舞台化を危惧する声もあったというが、今回のコラボレーションはバウホール公演での評価を見る限り、ゲームファンと宝塚ファンのどちらにも好意的に受け入れられたようだ。それは鈴木がゲームのもつ独特の味・リズムを感覚的に踏襲したことと、キャストが真摯に役づくりに取り組んだこと、その2つがそろってのことだろう。どちらかが欠けては成立しなかったであろうことは自明だ。

 演劇界では、コミックが原作のミュージカル『テニスの王子様』がいまやエンタメ界の一大コンテンツとなるなど、異業種のコラボが台頭してきている。この『逆転裁判』も近い将来、宝塚の転換期を示す1作として、かえりみられる日がくるのかもしれない。

 同公演は、バウホール公演は終了。続いて2月24日(火)から3月2日(月)まで、東京・日本青年館で上演される。

写真写真拡大宙組『逆転裁判』より=宝塚バウホール、撮影・岸隆子

写真写真拡大宙組『逆転裁判』より=宝塚バウホール、撮影・岸隆子


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