ヅカ★ナビ!
2009年2月27日
ナルホド弁護士(フェニックス・ライト:蘭寿とむ)と、奥に御剣検事(マイルズ・エッジワース:七帆ひかる)=宝塚バウホール『逆転裁判』より、撮影・岸隆子
御剣検事(マイルズ・エッジワース:七帆ひかる)。ゲームでは主人公のナルホド君を凌ぐほどの人気キャラ=宝塚バウホール『逆転裁判』より、撮影・岸隆子
『ベルばら』から源氏物語からドストエフスキーから韓ドラまで、古今東西のコンテンツを何でもスイーツな舞台にしてしまうのがタカラヅカの妙技。
そのタカラヅカが何と、人気のゲームソフト『逆転裁判』の世界に挑むという。タカラヅカの「何でもアリ主義」には慣れっこの私でさえ、これには驚いた。
まずは自分で体験してみよう、というわけで、今さらのようにニンテンドーDSを買うところからはじめてみる。
ところが……これが面白くてやめられない。寸暇を惜しんでゲームに没頭し、全5話をクリアしたときには、もはや廃人寸前だった。
こうして、予習ばっちり状態で迎えた『逆転裁判』の東京公演初日。
客席はいつにない異様な熱気に包まれており、普段の舞台では決してお見かけすることのないような若い男子2人組の姿もちらほら。この「違和感」……明らかに、客層がいつもと違う!
幕が上がると、そこには三次元のナルホド君(フェニックス・ライト:蘭寿とむ)が事務所のデスクに座っている。ボサボサな髪型は、トレードマークのギザギザ頭を意識したものだろう。
そして、イトノコ刑事(ディック・ガムシュー:春風美里)、矢張君(ラリー・バッツ:鳳翔大)、真宵ちゃん(マヤ・フェイ:すみれ乃麗)、サイバンチョ(風莉じん)など、ゲームでおなじみのキャラたちが、つぎつぎと登場するたびに、客席がどよめく。
いっしょになって反応してしまう私、もはやすっかりゲームファンモードである。
(注:舞台はアメリカはニューヨークに移されていますが、ここではゲームファンにもおなじみの日本版のキャラクター名を使わせてもらっています。)
そしていよいよ、御剣検事(マイルズ・エッジワース:七帆ひかる)の登場だ。ゲームでは主人公のナルホド君を凌ぐほどの人気を誇るキャラである。
おお、カッコいい! センター分けの髪型から襟元のフリルから、キザな仕草まで、もうゲーム画面から抜け出てきたような完璧さだ。
舞台のセットも、ナルホド君の弁護士事務所にいつも置いてある観葉植物にいたるまで、ゲーム画面が忠実に再現されている。矢張君のTシャツの絵柄に、さりげなく「タイホくん」が使ってあるところなど、じつに心憎い。
「神は細部に宿る」こうした細かいこだわりが、ゲームファンの心をくすぐるに違いない。
音楽もまた然り。ゲームでは、証言タイム、反対尋問タイム、真実告白タイムなどに必ず流れる定番のメロディーがあるのだが、それらがそのまま使われている。条件反射で思わず「ゆさぶる」「つきつける」ボタンを押してしまいたくなる。
なるほど、これならゲームファンがこぞって劇場に押しかけるわけだ。
だが後半、物語が山場を迎えるにつれ、今度は宝塚ファンの私が逆にこのゲームの底力を痛感することになる。
今回の舞台、ストーリーは『逆転裁判 〜蘇る逆転〜』の第5話『蘇る逆転』をベースにしている。笑えるせりふから、泣かせるせりふまで、要所要所できちんと再現されている。
それで十分に面白い、惹き込まれてしまう。要するにこのゲーム、魅力の根本はドラマにあるということだ。キャラクターたちの人間味あふれる個性、そして、ドラマの根底にある世界観の温かさ。だからこそ、私も廃人寸前までハマってしまったのである。
ドラマ自体に力があるのだから、「正しく」舞台化すれば必ず面白くなるに決まっている。この点に演出家が気付いた時点で、今回のコラボの成功はみえていたのだ。
ラストシーン、過去の呪縛から解き放たれたかつての恋人レオナ(美羽あさひ)を、ニックことナルホド君(蘭寿とむ)がガッシと抱きしめる。こればかりはゲームではお目にかかれないシーンだ。
思わず胸が「きゅん」となる。にわかゲームファンモードに入っていた私も、この瞬間だけは、いつもの宝塚ファンモードに逆戻り。「タカラヅカの底力、くらえっ!」と客席中のゲームファンに心で叫びたい気分になった。
今回の公演がきっかけで「宝塚って、いいね!」と思ったゲームファンは少なくないはずだ。
逆に、私が痛感するのは、『逆転裁判』というコンテンツの底力だ。うかつにも知らなかったゲームの世界の奥深さ。これなら世界に通用するのもよくわかる。
こうして、ゲームと宝塚のファン、お互いがお互いの魅力を新たに発見できれば、それこそが「幸せなコラボ」ではないか。経済活性化の小さな一助にもなるだろう。
さて、今の私の一番の悩みは『逆転裁判』の続編をいつ始めるかということだ。問題はただひとつ、「仕事とゲームをいかに両立するか」だけである……。