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インタビュー

『オグリ!』で文武両道のヒーローに 宝塚花組・壮一帆

2009年4月4日

  • 取材・文:佐藤さくら/撮影:岩村美佳

写真宝塚歌劇団花組・壮一帆(そう・かずほ)(プロフィール)=撮影・岩村美佳

 前回公演の『太王四神記』では、魔術師プルキルを鮮やかに演じ、新境地を拓いた宝塚歌劇団花組男役の壮一帆。ひと作品ごとに着実に演技力を身に付けてきた実力派が次に挑むのは、歌舞伎でも有名な題材をミュージカル化した『オグリ!〜小栗判官物語より〜』だ。4年ぶりの主演に挑む意気込みと、ふだんは役作りに苦しむという稽古場での素顔について聞いた。

不完全なヒーローだから魅力的

―― 初めにこの作品をやると聞いて、どう感じましたか?
壮一帆: 久しぶりの主演ということで、まず素直に嬉しかったですね。日本物は大好きですし、私の演じる常陸小栗は“文武両道の美丈夫”という人物なので、今からとても楽しみです。
―― ポスターを見ると、矢を持った着物姿の壮さんのたたずまいが清々しくて。
壮: 撮影の時は、演出の木村信司先生から「目力を効かせて!」と言われたので、そのつもりで撮っていただきました(笑)。
―― ベースになっている「小栗判官」の物語はご存知でしたか?
壮: 詳しくは知らなかったんですが、いろんな資料や、今回の作品のベースになる、近藤ようこさんのコミックなどを読みました。それで驚いたのは、小栗って全国にファンがたくさんいて、各地でイベントなども開かれているんです。これだけ愛されている人物ですから、しっかり演じなければ、と改めて感じているところです。
―― そんなにこの物語が愛されている理由は、何なんでしょうね。
壮: 「小栗判官」は元々“説経節”といって、仏教の教えを分かりやすいように面白くした物語なんだそうです。だから常陸小栗という人物自体に人を惹きつける力があるし、どう演じるかによって、その魅力が変わってくると思うので、私もどんどんイメージを広げていきたいですね。

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―― 物語の後半には、醜い姿になってしまう場面もあるようですが。
壮: 宝塚ですから、どういう姿かたちになるか、まだ分かりませんが、ちょっとタイプの違うヒーロー像になることは確かですね。小栗は単なる二枚目ではなくて、不完全な部分もある人間的なヒーローじゃないかなと思うので、そのあたりも面白く演じられたらいいなと。この物語は、常陸小栗と照手姫の愛を軸に進んでいくので、照手姫を演じる野々すみ花と2人で話し合って、そのあたりはキッチリと出していきたいと思います。
―― 宝塚の日本物というのも、独特の味わいがありますね。
壮: 着物の微妙な色合いの重なり具合いや、無駄のない美しさが日本物のいいところですね。私は昔から、日本の伝統や、スッキリした物や場所が好きなので、特に日本物のお芝居に惹かれるのかもしれません。日本物って窮屈で、着物の着こなしが難しかったり、カツラもかなり痛かったりするんですけど(笑)、なぜか妙に居心地がいいんですよ。
―― そのうえ、タイトルに“ミュージカル”とついていますね。
壮: 仮台本を読ませていただいたんですが、ト書きに「息の続く限り歌う」と書いてありました(笑)。タイトルどおり、歌でつないでいくミュージカル形式で、歌もたくさんあるようなので、今から覚悟しているところです(笑)。

自分のすべきことを再確認できた

―― 話は遡りますが、『太王四神記』のプルキル役は演じていていかがでしたか。
壮: ここまで悪役を演じるのは初めてだったので、いつも以上に日々の発見があって楽しかったですね。舞台上でも「もっとこうしたい」「こうやったらどうだろう」という気持ちがどんどん増してきて、新鮮でした。
―― 初めは正直、戸惑いもあった?
壮: 悪役であるということよりも、まだ役が決まる前に原作のドラマを見ていて、プルキル役の方の演技が素晴らしかったので、もしこの役をやるとしたら私はできるだろうかという怖さがありました。その不安は初日の幕が開いて、お客様の反応を感じるまで続いていましたね。(東京公演終盤の)今はもう、毎日が楽しいくらいなので大丈夫です。
―― 稽古場での役づくりはどうやって進めたのですか。
壮:  役づくりに苦しむのはいつものことなんですけども、今回は特に毎日のように、いろんな演じ方を試しました。周りで私の芝居を受ける人たちは大変だったと思います(笑)。実はそうやって悩んでいたある日、ガクッと私のテンションが落ちたことがあったんですよ。それを演出の小池(修一郎)先生がすぐに察知して、ズバッとダメ出しをしてくださって。その言葉はとても厳しいものだったんですが、いま自分が考えていることや目指すべきところをまさに突いたものだったので、それからだいぶ役のとらえ方が変わったと思います。

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―― 小池先生の作品での壮さんといえば、『DAYTIME HUSTLER』(05年)のヘイワードや、『アデュー・マルセイユ』(07年)のモーリスも印象的でした。どちらも一見いい人そうで、実は…という役どころですが、観ていてつい共感してしまうところもあるという。
壮:  ご覧になった方にそう思っていただければ嬉しいですね。人間誰しも持っている影の部分を意識して演じたつもりですし、私自身そういった闇に惹かれるところがあるので。
―― 映画や他のお芝居でも、影を背負った登場人物に惹かれてしまうとか?
壮:  そんな人ばかりを観ているわけではないんですが(笑)、観終わった後で印象に残ることは多いですね。『太王四神記』のドラマ版でも、ヨン・ホゲの父親ヨン・ガリョが、自分の息子がチュシンの王ではないことがわかって、「それでも私は息子を信じる!」というシーンがあるんです。父親ならではの愛と、それゆえにダークな方向へ走ってしまう哀しさとが紙一重になっていて、グッときてしまいました。
―― そんな貴重な経験を経て、次はいよいよ“美丈夫”常陸小栗へ。その振り幅が楽しみですね。
壮:  じつは最近、プルキル役に入り込みすぎて、普段の生活でも目つきが悪くなっていると言われるので、そこから直していかないと(笑)。『オグリ!』の稽古初日までには、ピュアでまっすぐな気持ちにリセットして挑みたいと思います。

◆ミュージカル『オグリ! 〜小栗判官物語より〜』 脚本・演出:木村信司

《宝塚バウホール公演》:5月8日〜19日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ)/《日本青年館大ホール公演》:5月26日〜6月1日(詳しくは宝塚歌劇公演案内へ

★壮一帆(そう・かずほ):8月7日生まれ。兵庫県川西市出身。96年「CAN CAN」で初舞台。花組配属となり01年雪組に組替え。06年12月、花組に復帰。身長170センチ。愛称「そう」。


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