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石丸幹二と坂東三津五郎がガチンコ勝負、舞台「GGR」

2011年3月5日

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写真:舞台「GGR グレンギャリー・グレン・ロス」製作発表より=撮影・岩村美佳
拡大舞台「GGR グレンギャリー・グレン・ロス」製作発表より=撮影・岩村美佳

 石丸幹二、坂東三津五郎らによる舞台「GGR グレンギャリー・グレン・ロス」の製作発表が、このほど行われた。今作は現代アメリカを代表する劇作家デビット・マメットが1983年に書き、翌年ピュリッツァー賞にも輝いた作品。マメットの最高傑作戯曲と言われている。1992年にはアル・パチーノ、ジャック・レモン、ケビン・スペイシーらのキャストにより映画化(邦題「摩天楼を夢見て」)もされている。映画監督であり三島賞受賞作家である青山真治が、初舞台演出をする。青山は「心の底から緊張して冷や汗をかいています。天才2人をお迎えして、胸を借りるつもりでこの強烈な現代アメリカ、あるいは今、目の前にある危機としての日本の現在を描くような演劇を力の限り作っていきたいと思います」と話した。(ライター 岩村美佳)

 G限界、Gギリギリ、Rルールなし。生き残りをかけた男達の熱い戦いが始まる。成功と昇進を求め、不動産業界を舞台に顧客争奪戦にしのぎを削る男たちを演じる、石丸と坂東。石丸は「お2人と初めてのお仕事ですが、ガチンコ勝負の舞台を楽しみにしています。舞台では2〜3人で語りながら劇が進みますが、冷や汗を相手にかかせながら、そして見ているお客様にも冷や汗をかいてもらいながら最後迄突っ走っていく芝居だと思いました。言葉だけでやりあう芝居は初めてですが、またひとつ自分の芸が磨かれればなと思っています」と話した。坂東は「背の低い、足の短いアメリカ人はいないだろう、おかしいだろう、と尻込みをしていましたが、青山さんにぜひとおっしゃって頂きました。演じる役が落ち目の中年の悲哀がこもった人間でしたので、それならできるかなと。今回は青山さんも、キャストの方も初めての方ばかりです。本当に異色の顔合わせというところに自分の身を投じることで、思わぬ化学変化ががおきたらいいなと期待しています。自分で気づいていない自分を発見出来る舞台になったら素敵だなと思います」と話した。

 映画と演劇の演出の違いについて尋ねられた青山は、「演劇に期待することは、『完成しないこと』かもしれないという気がします。映画は作り上がった完成品をみて感銘を受けることはありますが、作り手として完成した瞬間にそれはもう終わったことになり、ある種完成という退屈に陥るんですが、演劇の場合演出家にとっておそらく『完成』というのはないのだろう、もしくは毎回毎回が完成品であったり、あるいはとうとう完成せずに、進行しつづけることで、1回の公演が終わるただそれだけ。むしろそのことが、作り手も観客も皆巻き込んでの高揚感みたいなもので、未完成な状態であればあるほど大きいような気がするんですね。それを味わえるのかなと期待しています」と熱く語った。この戯曲を選んだ理由については、「映画は今でも忘れがたい佳作でした。マメットは映画監督としても好きな監督のひとりです。マメット作品をやるというのが非常に光栄で、大きな収穫、楽しみです。また、僕を含めて日本が今陥っている経済状況、暮らしそのものの危機みたいなものが、この戯曲の中に投げ込まれていると思います。現代に生きるということの危機感、焦燥、不安みたいなものが、暴力をいっさい使わずに描き込まれている、そのことに多いに共感を持って、この作品を選びました」と答えた。翻訳戯曲については「言語にとらわれることなく、俳優達が自由に試しながら作れる所がいい所。役者さんたちの生の言葉が飛び出してくるかもしれない期待もあります。常に前進していく形で演劇があればいいなと思っています」と話した。

 石丸が演じる役は、トップセールスマンで口八丁で人を煙に巻く野心家。今までは夢の中に生きているような役が多かったという石丸は、「台本を読んだら、嫌な終わり方をしているんですよ」と苦笑い。「こういう嫌な部分は普段私たちは隠して生きていると思うんですが、いわゆる着ているものを全部脱がなきゃいけないのかと。これは覚悟がいるなと思いました。『自分だったらどう言うかな』『人をこのように欺く自分はどうなのか』と、今、自分を見つめ直す作業に入っています。一度こういう役に正面から格闘してみたいと思っていましたので楽しみです」と話した。

 映画を見ていた青山が「日本のジャック・レモンといえば三津五郎さんしかいない」とオファーしたという坂東は、「自分がやることは別にしても、ジャック・レモンはしがない落ちぶれたサラリーマンだけど、色気があって素敵だと思いました。取り残されていくんだという焦燥感は今、我々の同世代の多くの方が、時代の流れの早さに追いつけない、『こんなに一生懸命生きてきたつもりなに、なんで俺は置いていかれるんだ』という思い、に共感を呼べればいいなと思っています。必死に生きていない人間はいないでしょう。この凝縮された芝居に出てくる人達は皆必死なんだけれども、それが悲しくも、おかしくも、愛おしくもみえたりする、そういう芝居になればいいなと思います」と話した。

 妻で女優のとよた真帆が出演した作品で初めて石丸の芝居を見たという青山は、「優れた俳優がしゃべる時に、その瞬間に出てくる音に魅了されます。常に素晴らしいセリフを素晴らしい音で発して下さる俳優さんがこの世で最も美しいものだとさえ思っています。「コースト・オブ・ユートピア」で石丸さんのセリフで全身が総毛立ち、涙が止まらなくなってしまったことがあります。それ以来一緒に何かがしたいとずっと…いや何だったら生活してもいい(笑)気持ちになりながら追い求めていたら、逆に何かやろうとお話して頂いて。あの音を出す人と一緒に仕事を出来るんだと、すでに大感動しています」と大絶賛。そして坂東については、「三津五郎さんの『馬盗人』を見た時に、腹を抱えて笑いました。ひょうきんな一挙手一投足の、実はラフにやっているようで乱れない動き、これはこの方にしか出来ないと。宮藤官九郎さんがお書きになったドラマ「うぬぼれ刑事」でも軽妙で、一瞬で場をかっさらう魅力に惚れぬき、何だったら自宅に押し掛けてでもいい(笑)気持ちになるぐらいで。この人じゃなきゃ嫌だとプロデューサーに泣きつきました。今から緊張しつつも、目がハートマークです」と惚れ込んでいる。「ローマのセリフの中に出てくる、立て板に水のごとく柔らかく言葉で人を騙しながら包み込んでいく、でもやがて追いつめられたときにどんなものがでてくるのかという期待、これは石丸さんにぴったりだと思います。口八丁手八丁で軽妙に人を巻き込みながら自分で自分の首を絞めていく役も、最初はコメディタッチでありながらどんどん罠に陥っていく役に三津五郎さんがぴったりだと思います」と話した。

 そして、不動産にまつわる話ということで、現在建て替え中の歌舞伎座をセールスするとしたらどんな販売文句を?と聞かれた坂東は、「売らないですよ! 歌舞伎座はやはり色んな人の思いがあそこに留まっている場所でしたから、新しくなってその皆さんの思いがちゃんと集まってくればいいなと心配をしています。誰にも売られないようにしていかなければいけない場所ですから、売り文句は出てこないですね(笑)」と歌舞伎座への深い愛情を込めて話した。


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