1930年代を舞台にした「オットーと呼ばれる日本人」が東京・新国立劇場で上演される。木下順二の戯曲を鵜山仁が演出。良き夫と国際スパイ、二つの顔を持つ男に、吉田栄作が挑む。
新聞記者オットーは、上海であるドイツ人と知り合い、戦争を避けるため国家機密を渡す。東京に戻り、温かい家庭生活の裏でスパイ活動を続けるが……。
モデルはゾルゲ事件にかかわった元朝日記者の尾崎秀実(ほつみ)。「自分の意見を持つことが難しい時代に自分の信念で生きた人がいる。その普遍的メッセージを伝えることが大切」と吉田は話す。
米国で修業した自身の経験を、上海に渡ったオットーにだぶらせる。米国で、日本人である自分と向き合ったという。「日本の良さ悪さや課題が見えたんです」
木下の戯曲はすべて日本語だが、鵜山はセリフの一部を英語や独語に変え、外国人俳優を起用した。外国語が飛び交うけいこ場に「オットーたちも英語や独語で会話したんだろうな」と実感した。
オットーのように信念を持った日本人はもういないのだろうか。「いや、いるんじゃないですか。まだ、勝負をかける時じゃないんだと思う」
27日〜6月8日。共演は紺野美沙子、永島敏行ら。6300〜3150円。劇場(03・5352・9999)。(井上秀樹)