「観客と一緒に考える演劇をつくっていきたい」と語る長塚圭史=堀英治撮影
劇作家・演出家の長塚圭史の新作「SISTERS」が7月5日、東京・渋谷のパルコ劇場で開幕する。家族の愛憎を描く書き下ろしシリーズの3作目。主演に松たか子を迎え、初めて女性をドラマの核に据えた。(藤谷浩二)
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長塚は演劇ユニット「阿佐ケ谷スパイダース」を主宰する小劇場界のトップランナーの一人。スパイダースの活動の一方、パルコ劇場で「マイ・ロックンロール・スター」(02年)、「ラストショウ」(05年)と、衝撃的な内容の家族劇を上演してきた。英演劇界の鬼才マーティン・マクドナーの3作品もこの劇場で演出し、注目を集めてきた。
「今回は、松さんの隣に生命力に満ちた女の子がいるイメージがまず浮かんだ」と話す。鈴木杏と松の「姉妹」というモチーフにたどり着いたが、その先は物語性あふれる長塚独自の世界が展開する。
料理人の夫(田中哲司)と寂れたホテルに来た馨(松)は、そこに暮らす遠い親類の親子(吉田鋼太郎、鈴木)と出会う。新婚旅行を終えたばかりの馨は精神が不安定で、封印していた過去がこの親子によってよみがえる。
「発散する役柄が魅力的な松さんに、内にこもる静かな女性を演じてほしかった。これまで、僕の芝居の女性は、男から見た対象としての存在でした。松さんや杏ちゃんの役を通し、女性の心理を皮膚感覚で書くことができた」
残虐な暴力やねじれた人間関係を描きながらも、長塚がそこに見いだしてきたのは人間の生きる力だ。だから、新作の準備中に起きた秋葉原の無差別殺傷事件はショックだった。「一事件ではなく、現象として起きたことの怖さ。ネットや携帯にリアルな生が侵食されていないか。演劇で暴力を描くことの意味は。色々と悩みました」
5月のスパイダース公演「失われた時間を求めて」では、不条理劇のような仕立ての中に、記憶や時間への考察を埋め込んだ。これまでは長塚が主導してきたが、この作品ではメンバーの中山祐一朗と伊達暁、客演の奥菜恵とアイデアを出し合いながら、けいこ場で練り上げる形の創作にも挑んだ。
現在33歳。今秋から文化庁の派遣でロンドンへ1年留学する。「元々1年ぐらい世界を放浪したいと思っていました。陰鬱(いんうつ)な街で、マクドナーのようなとんがった演劇人に会うのが楽しみです」
8月3日まで。7月5、6日はプレビュー。パルコ劇場(03・3477・5858)。北九州、新潟、大阪でも上演。