劇作家の鴻上尚史が野心的な演劇に挑んでいる。国民的マンガ「ドラえもん」を舞台化する一方、若手俳優らで新劇団を立ち上げた。「野望を持った若者が飛び込んでくるジャンルでありたい」と演劇の可能性を追求している。
「舞台版ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)」は長編アニメ映画が原作。鴻上が脚本と演出を手がける。沖縄で毎年開かれている国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(キジムナーフェスタ)から依頼されたのがきっかけだ。
「子供も大人も楽しめて国際的に胸を張れる作品」と考えて、ドラえもんを思いついた。「高校の時、単行本を読み返したら、SFのタイムパラドックスを描いた話があった。大人が十分興奮するじゃないか、って衝撃を受けた」
97年に英国留学した際、人気漫画が原作の舞台をいくつか見た。「『ウォレスとグルミット』なんて、犬の格好をした男が仏頂面で立ってるだけ。でも、演劇らしいリアリティーを出すことに成功すると、犬に見えてくる」。この時、舞台化できないものはないと確信した。
ドラえもんは着ぐるみ、のび太やしずかちゃんら子供の役を大人の俳優が演じる。タケコプターを使う場面では、実際に飛ばさずに飛んだように見せる演出を考えている。「アニメで簡単に表現できることをどう見せるか。ドラえもんからの宿題と思った」
初めて演劇に接する子供が多いことも意識する。「これならテレビや映画でいいじゃないか、と思われたら駄目。演劇とはこういうものか、と興奮してもらえたら」
また、新劇団の名前は「虚構の劇団」。5月に旗揚げ公演をした。メンバー9人の平均年齢は21.7歳と若い。
今の多くの演劇は2年前くらいに劇場や俳優を押さえ、粗筋を決めてしまう。従って現代の状況や考えをなかなか舞台に反映できない。しかし「虚構の劇団」では「1カ月半前に脚本があればいい」。小回りが利き、若手も育てやすいのが特徴だ。次の公演は12月の予定。
「舞台版ドラえもん」は19〜21日、沖縄市民会館▽30日、熊本県立劇場▽8月2、3日、北九州芸術劇場▽16日、神戸国際会館▽21日、愛知厚生年金会館▽30、31日、富山県民会館▽9月4〜14日、東京芸術劇場中ホール。出演は水田わさび(ドラえもんの声)、坂本真、すほうれいこ、脇知弘、小林顕作ら。サードステージ(03・5772・7474)。(井上秀樹)