第8回朝日舞台芸術賞(朝日新聞社主催、テレビ朝日後援)の08年上半期の候補が決まった。今回、舞踊賞を新設し、舞台芸術賞をアーティスト賞に衣替えした。現代舞踊の受賞作に、再演を支援するキリンダンスサポート(最高1千万円)がキリンホールディングスから贈られる。
■グランプリ
「焼肉ドラゴン」(新国立劇場制作、鄭義信作、鄭・梁正雄共同演出)▽「春琴」(世田谷パブリックシアター+コンプリシテ制作、サイモン・マクバーニー構成・演出)▽「Nameless Hands〜人形の家」(Noism08制作、金森穣演出・振り付け)
演劇の2作は海外との共同制作。在日韓国人の昭和史を描く「焼肉ドラゴン」が「普遍的でリリカル」と絶賛された。英国人演出家が谷崎の世界を舞台化した「春琴」は、実験的な演出などが評価された。「人形の家」は思索性と完成度の高さで選ばれた。
なお、グランプリ候補作の出演者とスタッフは、自動的に他の賞の候補になる。
■アーティスト賞
シルビア・グラブ(「レベッカ」の演技)▽土田英生(「なるべく派手な服を着る」の作・演出・出演)▽平幹二朗(「リア王」の演技)▽文学座(「長崎ぶらぶら節」「ダウト」「風のつめたき櫻かな」)▽松本祐子(「あの大鴉、さえも」「鳥瞰図」の演出)▽酒井はな(「カルメン」の演技)
俳優では、老王を力強く演じた平、「目の演技」と歌唱力でグラブが選ばれた。6人兄弟の家族を描いた土田、熱く丁寧な演出の松本に加え、多彩な演目を成功させた文学座も候補に。酒井は「新鮮さと風格」が注目された。
■舞踊賞
「空白に落ちた男」(小野寺修二構成・振り付け・出演)▽小島章司(「越境者」の演出・振り付け・出演)
「空白に落ちた男」は新たな表現を追求した点が評価された。フラメンコの小島には長年の功績も含めた総合的な評価を、との声があがった。
■寺山修司賞
栗田桃子(「父と暮せば」の演技)▽三浦大輔(「顔よ」の作・演出)▽村松卓矢(「ソンナ時コソ笑ッテロ」の振り付け・演出・美術・出演)
「清新な活躍」だったのが栗田。原爆で父を失った娘役で「一つの花を咲かせた」。三浦は主宰するポツドールの新作で「現代の病理をえぐる作家」と評された。大駱駝艦の村松には「舞踏の次世代の継承者」との評価もあった。
■秋元松代賞
風間杜夫(「恋する妊婦」「コーヒーをもう一杯/霧のかなた」の演技)▽謝珠栄(「タン・ビエットの唄」「Calli〜炎の女カルメン」の演出・振り付け)▽平淑恵(「長崎ぶらぶら節」の演技)▽波乃久里子(「婦系図」の演技)
「娯楽性と芸術性を兼ね備えた演劇」が対象。ひとり芝居5部作を完結させた風間、「文学座の和物の伝統を継ぐ存在」とされた平、新派120周年で当たり役に臨んだ波乃らベテランが選ばれた。謝は、オリジナルミュージカルの再演と新作が評価された。
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〈選考委員〉
大笹吉雄氏 演劇評論家
太田耕人氏 演劇評論家、京都教育大教授
小田島雄志氏 演劇評論家、東京大名誉教授
佐々木涼子氏 舞踊評論家、東京女子大教授
西堂行人氏 演劇評論家、近畿大教授
山田洋次氏 映画監督
山野博大氏 舞踊評論家(以上50音順)
粕谷卓志 朝日新聞社編集担当
畑山美和子 朝日新聞東京本社文化エディター