現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 舞台
  5. 演劇
  6. 記事

ワガノワ・バレエ・アカデミー 厳しさ支える心のケア

2008年7月25日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 ロシアから来日公演中のワガノワ・バレエ・アカデミーは創立270年。ワガノワ・メソッドで世界のバレエ教育を担ってきた。アカデミー出身でマリインスキー・バレエ(旧キーロフ・バレエ)のプリマとして活躍したアルティナイ・アシルムラートワ芸術監督に、教育方針などを聞いた。(上坂樹)

 キーロフ時代、英ロイヤル・バレエ、アメリカン・バレエ・シアターなど国外のバレエ団からも引っ張りだこだったアシルムラートワ。00年の芸術監督就任以来、その経験を子供たちに伝えたいと思ってきた。

 「あるバレエ団に招かれた時、教師に『ポジションをしっかり取って』と言われ、不審に思った。でも、それは足の甲の繊細な美を重んじるフランスの伝統から来た言葉だと、はっと気づきました」

 美しい姿勢や、パ(ステップ)からパへの自然な流れなど、ワガノワ・メソッドへの確信がある一方で、「学ぶべきものがないと思ったら進歩は止まる」と自戒する。

 ロシア全土から毎年4千人以上が受験し、60人ほどに選別される。最初に求めるのは心のあり方だ。「目上の人にあいさつできるか。なぜここへ来たかを自覚し、どう成長していくべきか、自分で学びとっていかないと」

 厳しい試験を突破しても、訓練過程で淘汰(とうた)され、卒業できるのは半分に満たない。

 「自分からやめる子はいない。評価基準に沿い、周囲が説得する。まず親に状況を話し、心理ケアの先生が子供に他の道があることを言い聞かせる。教師の側も、このつらさに耐えるしかない」

 それだけに生徒が卒業後、プロの道を開いた時の教師の喜びは大きい。今年は、26人の卒業生全員がマリインスキー劇場やマールイ劇場などのバレエ団に入団が決まった。

 「クラシックバレエ、現代舞踊、俳優としての演技力など、プロとして自立するためのものは教えたつもり。後は各バレエ団の要求に、努力と工夫でどう応えるかです」

 一昨年、8年制から9年制になり、7年までの小、中、高校プログラムに2年の短大プログラムが加わった。「ロシアで進む教育改革の一環です。職を得た時に給与が違ってくるし、ダンサーを終えた後、教師として生きていく道も近くなるのがうれしい」

 人気ダンサーだったザクリンスキーとの間の長女も在籍中だが、「他の子と区別しない。試験の審査にも加わらない」。取材中、教え子たちがあいさつしながら通り過ぎるたびに笑顔で応える。「皆、自分の子のようなものです」

 愛情に裏打ちされた厳しさが、ワガノワ・バレエ・アカデミーの神髄だ。

 公演の問い合わせはチケットスペース(03・3234・9999)。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内