
メキシコ人の歌手が日本語で歌うオペラ「夕鶴」(木下順二台本、團伊玖麿作曲)の来日公演が、各地で開かれている。メキシコと日本の交流が始まって400年。メキシコ在住のバイオリニスト黒沼ユリ子が企画と音楽総監督を務め、05年に現地で初演された。「日本の誇るオペラを、真に世界のレパートリーにするための第一歩」と語る。
メキシコ人学者と結婚した黒沼は、72年にメキシコに移り、現地で音楽学校を作って子供たちを日本で交流させるなど、「文化大使」とも言うべき存在だ。
メキシコで活躍した演劇人で社会主義活動家の故佐野碩(せき)が晩年、「ここでいつか『夕鶴』を上演したい」と黒沼に語ったことがきっかけだった。同じく日本女性が主題のオペラ「蝶々夫人」と違い、台本も音楽もすべて日本人の手による作品。「夫への献身、情の深さ、潔さ。日本女性ならではの倫理観が十分に表現されている」
画家のフリーダ・カーロをはじめ、世界的アーティストが輩出したメキシコは「伝統を大切にしつつも異文化を共存させ、何かを創造していく力がある」。「夕鶴」の難しい日本語のニュアンスを、メキシコ人歌手たちが必死に理解しようと練習する姿にも、日本文化への共感を強く感じたという。「だから今度は、日本がメキシコを知る番です」
指揮はジェームズ・デムスター、出演はつう役のエンカルナシオン・バスケス、与ひょうはアンヘル・ルスほか。残る公演は以下の通り。15日午後2時、千葉県文化会館▽20日午後3時、三重県総合文化センター▽21日午後6時、東京・昭和女子大人見記念講堂。出演者がそれぞれにアリアを歌う「『夕鶴』コンサート」は23日午後2時、千葉県南総文化ホール。電話03・6418・8573(実行委員会)。(吉田純子)