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劇団・維新派「呼吸機械」 湖上で見る一瞬の夢

2008年10月17日

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 壮大なスケールの野外劇で知られる大阪の劇団「維新派」が、滋賀県長浜市の琵琶湖の水上に特設した舞台で刺激的な新作を上演した。主宰の松本雄吉作・演出「呼吸機械」は、20世紀半ばの東欧ポーランドを舞台に、人間の欲望が極限まで肥大した現代を鋭く照らしだす。

 ブラジルの日本人移民を描いた昨年の「ノスタルジア」に続く、「〈彼〉と旅をする20世紀三部作」の第2弾。歴史を俯瞰(ふかん)する4メートルの巨大人形〈彼〉は、前世紀の人類の愚行を知る観客の目の象徴でもある。旅人姿の〈彼〉が見つめるのは、第2次世界大戦やホロコースト、全体主義の共産国家を生き抜くユダヤ人の戦災孤児たちの物語だ。

 カイ(カイン)、アベルといった孤児の名や旧約聖書の創世記を引用したせりふが現代のドラマに神話の相貌(そうぼう)を与え、巨大な舞台美術(柴田隆弘)が寓話(ぐうわ)性を増幅する。東欧の街並みやナチスの機関車、月にも地球にも見える天体が次々と現れ、ちっぽけな人間と対比される。

 白塗りの役者が変拍子の音楽(内橋和久)に合わせ、様式的な動きを交えて演じる。この独特なスタイルがべたついた感傷を排し、叙事詩のような劇の骨格を支える。松本はそこに映画「灰とダイヤモンド」のイメージを重ね、活劇の魅力を吹き込む。

 少年少女の成長物語と物質文明への懐疑。二つのモチーフが強く刻印された舞台だ。野や街を駆け回る孤児たち。「呼吸機械」と化し、生産に励む労働者。幕切れに横たわって湖上を漂う〈彼〉を取り囲むビルや工場、自由の女神像。「20世紀に人間が失ったもの」を探る旅は、舞台に流れこむ大量の水とともに終わる。東西陣営に翻弄された東欧の現代史そのものが、「水上の楼閣」での一瞬の夢だったかのように。(藤谷浩二)

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