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戦争と向き合う舞台に主演するベテラン女優 渡辺美佐子/大竹しのぶ

2008年11月21日

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写真渡辺美佐子さん=横関一浩撮影大竹しのぶさん=横関一浩撮影

 渡辺美佐子と大竹しのぶ。ともに母でもある2人のベテラン女優が、戦争と正面から向き合う舞台に主演する。きなくさくなってきた世の中への、静かで強いメッセージだ。

■渡辺美佐子 原爆で失った友胸に

 燐光群の新作「戦争と市民」は、主宰で作・演出の坂手洋二と渡辺との雑談がきっかけで生まれた。「数年前にイラク女性の手紙を読む会で坂手さんと会い、父が戦時中に掘った防空壕(ごう)のことを話した。彼は『芝居にしましょう』と言ってくれた」

 東京・麻布にあった自宅の庭の小さな壕で、12歳の渡辺は連夜空襲を目撃した。「爆弾はザアーッ、焼夷(しょうい)弾はヒュルヒュル。二つの音は違う。爆撃の音や地響きが怖くていつも外に顔を出していた。不思議ですが、高射砲やサーチライトが照らす夜空をきれいだと感じた」

 坂手は渡辺のこの体験を織り交ぜ、捕鯨基地の港町に暮らす食堂のおかみ(渡辺)が防空壕跡にこもる日々の末、ある使命を抱いて市長選に立候補する物語を紡いだ。「63年前の壕の中で目覚めた人。戦争を真っ向から書く劇作家が少なくなった中、坂手さんは庶民の戦争をリリックに描く貴重な存在」

 「この子たちの夏」など戦争を考える朗読劇にも長年出演してきた。広島へ疎開し、原爆で死んだ同級生の龍雄君への思いからだ。「誰にとってもかけがえのない人生があったはず。戦没者を数でくくるのはおかしい」

 12月7日まで、東京・下北沢ザ・スズナリ。その後仙台、盛岡、名古屋、福岡など巡演。電話03・3426・6294(燐光群)

■大竹しのぶ 反戦の思い伝えたい

 こまつ座の音楽劇「太鼓たたいて笛ふいて」(井上ひさし作、栗山民也演出)で大竹が作家の林芙美子を演じるのは3回目。02年の初演、04年の再演で数々の賞を受けた当たり役だ。

 林芙美子といえば森光子の「放浪記」が有名だが、井上は菊田一夫が描かなかった戦中戦後の林の作家活動を丹念にたどる。従軍作家として戦争を熱烈に鼓吹した林は敗戦後、反戦文学に転じる。

 「無知な人間の妄想ほど恐ろしいものはない。芙美子に重ね、井上さんの祈りにも似た反戦の思いが込められた作品。若い人にぜひ見てもらいたい」。大竹がそう実感するのは、たとえばこんな所だ。南方から生還した“戦死者”の青年に芙美子が「おかえりなさい」と声をかける場面で、「ト書きに(全世界の愛を込めて)とある。すてきですが、どんな風に言ったらいいのか悩む」とほほ笑む。

 23歳の息子を持つ母として、多くの若者が倒れる戦争のむごさを思う。「井上さんや亡くなった筑紫哲也さんが言葉で伝えてきたことを、私は演技で伝えていきたい。田母神さんですか? この舞台を見てくれるといいと思います」

 12月20日まで、東京・新宿の紀伊国屋サザンシアター。その後山形県でも。電話03・3862・5941(こまつ座)

(藤谷浩二)

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