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クドカン版で手触り一変 劇団☆新感線「蜉蝣峠」

2009年3月31日

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 劇団☆新感線のお家芸「いのうえ歌舞伎」に新風が吹きこんだ。座付き作家の中島かずきに代わり、大人計画の宮藤官九郎が劇作を手がけた「蜉蝣(かげろう)峠」。ロックに乗せた痛快時代活劇という表現の幹は揺るがないが、作者が異なれば劇の手触りは一変する。

 伝奇や幻想を交え、民衆のうねりが生む裏面史を骨太なタッチで紡ぐ中島。対する宮藤はゆるい笑いと重い感動が同居する、ないまぜのカオスが持ち味だ。演出のいのうえひでのりは、パロディーやコント的笑いを満載した劇団のもう一つの路線「ネタもの」の手法も駆使して新感線色に染めた。

 記憶を失い、蜉蝣峠で長く無為の時を過ごした闇太郎(古田新太)がヤクザ者の支配する江戸時代の宿場町「ろまん街」に現れる。一見茫洋(ぼうよう)としたこのアウトローの過去の回復と街の覇権をめぐる騒動が主筋。25年前に街の人々を皆殺しにした「大通り魔」は誰かというサスペンスがからむ。

 古田が主演し、客演の堤真一が敵役に回る配役が面白い。堤がニヒルなヤクザの天晴(あっぱれ)役のほかに想像もつかない姿と関西弁で抱腹絶倒の笑いを誘えば、古田は内面をジグソーパズルのように埋めていく難役を緻密(ちみつ)に演じる。橋本じゅん、高田聖子、高岡早紀、勝地涼ら、濃いキャラクターを楽しげに演じる共演陣にも精彩がある。

 英雄や大悪漢が登場して強烈なカタルシスをもたらす中島版に比べ、今回の宮藤の戯曲では、しょぼい人々が分断された人間関係の中でもがき続ける。個々の人物の切ない心の揺らぎを巧みに描くのが、笑いに劣らぬ宮藤の魅力。ある意味で畑違いともいえる戯曲を徹底的に身体表現に落とし込み、大劇場の娯楽活劇として成立させられるのが、いのうえと新感線の円熟なのだろう。(藤谷浩二)

 4月12日まで、東京・赤坂ACTシアター。

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