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退廃空間に純潔一点 「毛皮のマリー」の“美少年”吉村卓也

2009年4月17日

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 寺山修司が詩的なせりふをちりばめて書き、美輪明宏が主演・演出する舞台「毛皮のマリー」が東京・ルテアトル銀座で上演中だ。今回「美少年オーディション」で選ばれた新人吉村卓也(19)が欣也少年で出演。寺山と美輪という異能の芸術家間から生まれ出た、あやしい退廃空間に一点の純潔さを添えている。

 「毛皮のマリー」は寺山が美輪にあて書きし、1967年初演、美輪演出版は01年から。過去、いしだ壱成、及川光博らも欣也少年を演じてきた。だが、もともとは「純粋さゆえの残酷さ」(美輪)を兼ね備えた、匿名性の強い美少年がふさわしいようだ。

 オーディションは昨年11月15日に実施され、約800人が応募。満場一致で吉村に決まったという。「今までの欣也と違い、屈折した影がなかった。戦前の正統派の日本美少年といった感じでした。これは今、世間が求めている礼儀正しく明るくさわやかな『○○王子』に通じますよね」と美輪はいう。

 吉村は広島市出身。演劇経験はほとんどなく、インテリアや服飾デザイナーにあこがれていた。「知り合いの方から美輪さんの舞台の世界観のすごさを聞いて、応募しました」と話す。美輪は「彼は、人から要求されていることを頭の中で素早く読み取って動いている」と見る。

 立ち退きを迫られている男娼(だんしょう)マリー(美輪)の豪華な一室。マリーと、室内でチョウを捕獲して標本作りにふける欣也(吉村)の疑似近親愛、憎悪の物語が展開する。登場人物は倒錯し、なぞめく。今回も、下男と醜女のマリー役が麿赤児、美少女・紋白役は若松武史。見世物小屋のアングラ感覚が、ぐっと強まる。

 「寺山さんは戯曲の中で、うどんも女も灰皿も高級陶器も、すべてフラットに扱った」。それでいて乱雑にならないのは、せりふにも人の動きにも、ある種の様式性があるからかもしれない。

 美輪は「家族問題を考えさせますし、社会批判もある。メッセージはおてんこもりです」とも言う。

 「それに、今は芝居より現実の方がドラマチック。だから、この芝居のように、現実にはない美しいロマンチシズム、リリシズム、切なさ、猥雑(わいざつ)さを伝えるところに芸術の存在価値があるのです」

 5月10日まで。出演はほかに菊池隆則、日野利彦、マメ山田ら。7千円、1万500円。(米原範彦)

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