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伝えたいのは「会話の大切さ」 佐々木愛舞台生活50周年

2009年7月11日

 劇団文化座の佐々木愛が舞台生活50周年を記念し、カナダの翻訳劇「こんにちは、おばあちゃん」に主演する。若手俳優2人を共演に抜擢(ばってき)し、演出には青年座の黒岩亮を初めて招いた。劇団代表として、「いま、この時代に文化座が発信すべきものは何か」と考え抜いた末に企画した公演だ。

 カナダ演劇に詳しい吉原豊司が翻訳し、過去に「やとわれ仕事」の題名で日本でも上演されてきたフランク・モハーの代表作。地方都市カルガリーを舞台に、一人暮らしの元数学教授フィップス夫人(佐々木)と、近所に住むティム(白幡大介)とジネット(青山真利子)の若い夫婦とのこまやかな交流を描く。

 「ティムが見ず知らずのフィップスに『ねえ、おばあちゃん』と話しかけて始まる芝居。なんでもメールで済ませる世の中で、会話によるコミュニケーションがいかに大切で、深い人間関係を生みだすかを伝えたい」と佐々木。

 独居の孤独と認知症の兆候に直面するフィップスと、貧しさに耐えて未来の可能性を探る夫婦の共生。登場人物が抱えるのは、現代の日本人にも通じる普遍的な問題だ。

 演出の黒岩とは初顔合わせ。気鋭の演出家にすべてを任せ、「新人のつもりで役に挑んでいます」と打ち明ける。3人だけで劇団の本公演を打つのも冒険だ。「個性的な若手が育ってきたので、彼らが光る役を、という思いもあった。劇団は自己主張集団でないと長続きしない」と笑う。

 文化座は42年に旗揚げした屈指の老舗(しにせ)劇団だ。佐々木は高校在学中の60年に研究生となり、父の演出家・佐佐木隆(67年死去)、母の女優・鈴木光枝を引き継ぎ、87年に3代目の代表に就任した。07年に鈴木が世を去り、佐々木ら第2世代が劇団を支える。

 公演中に66歳の誕生日を迎える佐々木は語る。「70歳のフィップスを演じるのは、老いてなお女優のプライドを持ち続けた母へのオマージュです。同時に、老境へ向かう自分を客観的に見つめ直すよい機会にもなる。50年は本当にあっという間。派手な芝居をする劇団ではないが、この作品のように温かい気持ちを観客に手渡せる戯曲を、これからも上演していきたい」(藤谷浩二)

 16日から26日まで、東京・六本木の俳優座劇場。5500円。03・3828・2216(文化座)。

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