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歌や踊りが生かしてくれた 「ウモジャ」9月上演

2009年8月24日

写真テンビ・ニヤンデニさん

 多くの涙がしみこんだ大地から、爆発的な生命がパフォーマンスとして噴き出した――。南アフリカの歴史を歌舞でたどる舞台「ウモジャ」が9月19〜23日に東京の赤坂ACTシアターで上演される。ミュージカルの枠をはみ出し、踊り、音楽、衣装の色彩が圧倒的な力で迫ってくる。制作者の一人、テンビ・ニヤンデニに聞いた。

 「ウモジャ」はスワヒリ語で「まとまりの心」を意味する。これまでに英国など30カ国以上を巡った。日本では03、04年に次ぐ上演だ。

 「アパルトヘイト(人種隔離)は世界に知られていた。しかし、つらくて苦しい最悪の時代に私たちを生きながらえさせたのは、最高の音楽や踊りだった、ということは伝わっていない」

 語り部の老人とともに、古代から現代までをオムニバス形式でたどる。約40人が出演し、スネークダンスやガムブーツダンスなどを見せる。堂々たる体格の女性たちによる激しくも喜びに満ちたダンスは目玉だ。「各部族に伝わる芸能から最高のものを厳選した」

 制作者はテンビと友人のトッド・トワラの2人。ともに旧非白人居住区ソウェト出身で、歌手やダンサーとして活動していた。90年代前半に「自分たちの手でミュージカルを」と思い立ち、貧しい若者に歌や演技を指導。完成には9年かかったという。

 アパルトヘイトの記憶は今も生々しい。

 「理由もなく逮捕され、殺され、女性の多くがレイプされた」。青春時代の恋愛について聞くと、にこりともせず言った。「恋なんてなかった。生きていること自体が、何か間違ったところにいるようだった」

 「白人の目を逃れ、家の中で歌い踊った。大きな穴に落ちた気分だった。『ウモジャ』はここから抜け出したいという強烈な気持ちの延長線上にある。圧政下でも音楽と踊りを失わなかったのは、それがほとんど唯一生きることだったから」

 英国や米国のミュージカルへの対抗心はないという。

 「皮肉なことだけど、圧政下にあると、人はかえって創造的になるのかもしれない」

 全8公演。字幕解説付き。9500円。電話03・3943・9999(光藍社)。(米原範彦)

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