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呼び起こされる記憶と夢 維新派「ろじ式」

2009年10月27日

 大阪の劇団・維新派による6年ぶりの東京公演だ。2回目の国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」の開幕作品として招かれた。壮大な野外劇がこの劇団の真骨頂だが、今回の会場は廃校の体育館を転用した約200席の小劇場。どんな作品になるのかという観客側の懸念を吹き飛ばし、作・演出の松本雄吉はユニークな手法で、広大な世界と悠久の時を小空間に詰めこんでしまった。

 まず目を奪うのは無数の標本を配した舞台(柴田隆弘美術)。1辺60センチの立方体の木枠でできた標本箱には、劇団員が手作りした大小の動物や魚の骨格、化石、昆虫などが納められている。800個もの標本箱を出演者が自在に並べ替えたり積み重ねたりして、多彩な情景を生みだす。

 題の「ろじ式」は、つげ義春のマンガ「ねじ式」と街の路地に由来する。内橋和久の音楽に合わせた全10場で構成される舞台には、「ねじ式」に通じるシュールな夢のような味わいと、路地を駆け回った昔の少年少女の懐かしい面影がある。「鍍金工(めっ・き・こう)」の場は少年工だった体験を別の作品で描いているつげへのオマージュだろう。

 30人の出演者は白塗りし、舞台上のイメージを単語に集約したせりふを音楽にのせて語る。表情に頼らない無機質で身体的な集団演技はこの劇団の特色だが、野外劇場よりも舞台が近いため、演者の個性がより強く伝わってくる。

 劇が進むにつれ、鍋や釜、靴、電灯など日用品の「標本」も登場する。人類の祖先が直立歩行を始めた太古から昭和の路地の風景まで、学校の理科室を思わせる空間で記憶と夢が呼び起こされる。いわば標本を触媒にした「博物誌演劇」。だが、そこに堅苦しさはない。「これ、おもろいなあ」とでもいった風な、柔らかな感性と好奇心が魅力的だ。(藤谷浩二)

     ◇

 11月3日まで、東京・にしすがも創造舎。屋台村も開設。

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