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「血は立ったまま眠っている」に主演の森田剛さん

2010年1月8日

■新しい叙情 求めて

 人気グループ「V6」のメンバーになって今年で16年目。バラエティー番組で見せるちょっとやんちゃな素顔には、まだ少年の面影を残している。

 アイドルとして10代と20代を駆け抜けた彼にはもうひとつの顔がある。ナイフのようなまがまがしさと湧(わ)き水のような純粋さを持つ舞台俳優の顔だ。

 とはいえ舞台出演はまだ2作のみ。その魅力に触れた観客は多くない。だが、可能性にひかれたのだろう。演出家の蜷川幸雄は18日に開幕する「血は立ったまま眠っている」で、初顔合わせの彼を主役に選んだ。

 昨年暮れ、さいたま市のけいこ場。テレビの収録やコンサートも重なり分刻みのスケジュールの中、短い夕食の時間を取材に振り替えてくれた彼は、舞台の魅力をこう言い表した。

 「僕にとって舞台は一番勉強できるところ。出会う人々から影響を受けるし、現場にはいい緊張感がある。今後どんな仕事をするにしても、舞台での経験はつながっていくと思う」

 「血は立ったまま〜」は寺山修司が23歳で書き、安保闘争さなかの1960年に発表した初めての戯曲。倉庫に住み、暴力革命を夢見る少年テロリスト・良(森田)と兄貴分の灰男(窪塚洋介)、良の姉・夏美(寺島しのぶ)らが織りなす青春の物語だ。寺山と同い年の蜷川が「いつか必ず演出したい」と切望してきた作品でもある。

 ナイーブな変革への夢とテロルの悲劇。理想と現実に引き裂かれ、軋(きし)んでいく良の心身をどう体現するか。模索は続く。「詩的なせりふに引っ張られて心が動く。初めての経験です。60年当時の体験を織り交ぜ、色々な話をしてくれる蜷川さんの理想に少しでも近づきたい」

 08年に劇団☆新感線に招かれ主演した前作「IZO」では、幕末の土佐出身の下級武士で「人斬(き)り」と恐れられた岡田以蔵を好演した。時代のうねりに消えゆく孤独なテロリストという肖像は本作とも重なる。

 今回、蜷川は森田に「新しい叙情の創造」を託す。「大きな抑圧と衝突し、生々しく自由を希求する姿を見たい」。一方、森田はこう語る。「完全に解放された自由とそうでない自由。二つの自由があるような気がする。それを見せたい」。寺山、蜷川、森田。半世紀を隔てた過激な表現者たちの出会いだ。(藤谷浩二)

    ◇

 もりた・ごう 1979年、埼玉県生まれ。95年「V6」結成。ドラマ「月下の棋士」「喰いタン」シリーズなど。「血は立ったまま眠っている」は1月18日〜2月16日、東京・渋谷のシアターコクーン。

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