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舞台「ジョン・ガブリエルと呼ばれた男」仲代達矢、イプセン作品に主演

2010年2月12日

写真拡大仲代達矢

■負の世界で格闘続けたい

 イプセンの最後期の悲劇「ヨーン・ガブリエル・ボルクマン」を脚色した舞台「ジョン・ガブリエルと呼ばれた男」(笹部博司台本、栗山民也演出)が12日、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで始まる。成功しながら一転して没落、それでも自分の夢に固執する不屈の男と、彼を取り巻く女たちの物語だ。ボルクマン役を主演する仲代達矢は「宿命を感じる作品」と話す。

 1896年の作品。愛憎と和解、夢と絶望、実体と影など、イプセンの人生もだぶってテーマは複層的だ。ギリシャ悲劇に連なる格調も備えている。

 双子の姉妹(大空眞弓、十朱幸代)がかつて奪い合った、銀行の元頭取ボルクマン(仲代)について語り合う場面から始まる。笹部は、主に森鴎外の訳本に準拠しつつ、現代語化。登場人物を4人にしぼり込み、ボルクマンと姉妹の3者間での対話劇を浮き上がらせた。

 「孤立すると、人はまいるのに、彼は夢を追い続ける。攻め一色で、いくら殴られても立ち上がるボクサーのような人物。役を通じて私がこの作品に没入していくのが理想的だ」と仲代。

 イプセンは裕福な商家に生まれたが、幼少時に破産。どん底を味わった。仲代は10歳ごろから、多くの職を経験した。「ボルクマンにも強烈なコンプレックスがある。だから強がる」

 「役者人生の節目にはいつもイプセンがいる」という。1955年、劇団俳優座のデビュー作が「幽霊」。75年に夫人の故宮崎恭子と設立した俳優養成所「無名塾」でも「ソルネス」を上演した。

 「時代を超えた新しさがある。今もそうですが、どんな時代でも、人間は確信と不安の間で揺れている。役者もそう。私は、自分を負の世界に置いて、格闘し続けたい。体は悲鳴を上げますが、そこに誇りが生まれる。批判されると、闘志がわいてくる」

 仲代の眼光は凶器のように鋭い。例えば映画「炎上」「影武者」などで顕著だろう。しかし、映画「ハチ公物語」では慈愛があふれる。二つの印象の間には、映画「乱」で現れる空虚な風が吹きすさぶようだ。

 「基本的に、私はニヒリズムの人なんでしょう。長い役者人生でつくづく思うのは、人は生まれ、生きて、死ぬということ。ならば、ボルクマンのように、夢に向かって死んでいきたい。退場する時にはガソリンを空っぽにして」

 21日まで。米倉斉加年も出演。6千円、7800円。電話03・5432・1515(劇場)。3月18〜20日に東京・池袋の東京芸術劇場中ホールでも上演する。

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