現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 舞台
  4. 演劇
  5. 記事

三島由紀夫の戯曲「卒塔婆小町」「葵上」に主演 美輪明宏

2010年3月26日

 歌って、演じて、演出して、美を伝道する。壮麗な舞台、演技などは、装飾曲線的なアールヌーボー調と単純直線的なアールデコ調が混交。美や純粋さを汚すものは、決然と排撃する。

 「春は演劇、秋は音楽会」という活動を続けてきた。今年は没後40年になる三島由紀夫の戯曲集「近代能楽集」からの「卒塔婆(そとば)小町」「葵上(あおいのうえ)」で主演する。

 「三島さんにこわれて『黒蜥蜴(とかげ)』で主演したことが『近代能楽集』につながった。でも、最初は食指が動かなくて」

 「卒塔婆小町」は、詩人が老婆に小野小町の姿を見て、命と引き換えに「美しい」と口走って死ぬ。「葵上」は、狂おしい恋ゆえに生き霊となった貴婦人が青年を冥界に誘い込み、青年の妻を取り殺す。いずれも能を原作としつつ、美の超越性や濃艶(のうえん)なマダムと美青年の恋愛など三島美学が注入されている。

 美輪は、さらに自身の美学をあざなう。「『卒塔婆』は、深草少将が輪廻(りんね)転生して、結ばれぬ百夜通いを繰り返すわけです。詩人の命を救うため、小町は自分を醜いと必死におとしめる。真心、無償の愛があるんですね。老婆の醜さと小町の美しさを可視的に表さないと、観客の想像力もかき立てない」

 美輪は、首をすぼめるなどして老婆体となり、身をすっくと立たせて美女体となる。瞬間的な変身演技術だ。三島は「早替わりはできないよ」と言ったが、美輪は「2、3分あればできますよ」と答えたという。

 「『源氏物語』を読むと、六条御息所は、我知らず生き霊が葵上を苦しめている、と反省する女です」。当初からこれらのプランを三島に話したが、実現したのは1996年だった。

 三島戯曲は文学的には秀抜だが、舞台化は難しい。演出・演技の質が舞台の良否を分ける。「戯曲の言葉は、着物で言えば、すそよけ。古今東西の歴史などを総動員し、俳優の声、動き、装置、照明、衣装、そして何よりも思念を通して、演劇にしなければならないのです」

 エログロナンセンスの退廃美や昭和モダンの時代は世界的にも、装飾が洗練され、シュールな感覚も備わった文化が開花した。自分たちは、そんな時代の最後の申し子だという。「私が表現しようとしているのは、三島作品というよりも、あの麗しき時代なのです」(米原範彦)

    ◇

 みわ・あきひろ 1935年、長崎市生まれ。歌手、俳優などとして支持を得る。携帯サイト「麗人だより」も話題を集める。パルコ制作「卒塔婆小町」「葵上」は4月6日〜5月9日、東京・ルテアトル銀座で。各地も巡る。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内