2010年4月12日
肉体を過剰なまでに酷使し、演劇ならではの虚構性に満ちた世界で注目を集める若手劇団「柿喰う客」に所属する舞台俳優だ。
小柄ながら、切れ味鋭い動きと射抜くような瞳で、観客に強い印象を残す。「小劇場の女優って将来が難しい。ドラマや映画の脇役では使えないぐらい個性的な役者になり、ずっと舞台で面白がられたい」
故郷の宇都宮市では8歳から高校生までサッカー少女だった。なでしこジャパンに進んだ仲間もいる強豪クラブで球を追う日々。上京して玉川大に進学後、友人宅で偶然会った主宰の劇作家・中屋敷法仁に誘われ、2004年の旗揚げ公演で「素人同然のまま」初舞台を踏んだ。
「『柿』の特色は生命力が強い人ばかりなこと」。6人の劇団員は猛者ぞろい。劇団外の公演への出演も多い。合言葉は「演鬼(えんき)」、すなわち「演劇の鬼」になることだ。
彼女が「演鬼」の顔を見せたのは08年暮れの自主公演「プルーフ」。貯金をはたいて創設した個人ユニット「コロブチカ」の第1回公演として、企画・制作・主演を兼ねた。
ともに精神が不安定な数学者の父娘を描いた秀作で、映画ではグウィネス・パルトロウ、日本の舞台では寺島しのぶが演じた次女役を繊細かつみずみずしいタッチで好演し、新生面を開いた。「劇団では男の子っぽい役が多かったので、初めての翻訳劇でやりたいことができてよかった」。公演の赤字20万円もコツコツと返した努力家だ。(藤谷浩二)