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謎解きの先に厚い人物像 奇想生かした劇団イキウメ新作

2010年5月21日

 SF的な設定を使ったホラー風の作劇で注目されている前川知大が、主宰する劇団イキウメで作・演出の新作を上演している。

 風変わりな題名は、漂っているものが一時とどまる場所、といった意味のようだ。

 舞台は東京から少し離れた町。離婚するつもりで、この町にある実家に帰った要(伊勢佳世)はある日、開店準備中の飲食店に入ってゆく夫の滋(浜田信也)を見かける。要は、滋をつかまえて不誠実な態度をなじるが、滋はいま自分がどこにいるのかも分からない状態だ。この店では、他にも不可解なことが起きており、一方、東京には、普段通り会社で働く「もう一人の滋」がいた。

 同じ人間が複数出現するドッペルゲンガー(分身)をモチーフに、なぜこの現象が起きるのかという「謎解き」をエンジンに劇は進む。探偵役は、高等遊民のような暮らしをしている要の兄・輝夫(安井順平)。その旧友の不動産屋(盛隆二)が相棒を務める。

 輝夫らがゲーム感覚で解き明かす不思議な現象の仕組みは、なるほどと思わせる。だが、この劇の魅力は、そうした技巧的な展開の先に、超自然的な出来事と、要という人間の内面が共振するところにある。

 これまでの前川作品は、ともすると奇想のおもしろさが前面に出て、作者が設定した世界の中で生きる人間は、一定の役割を果たす平面的な存在になりがちだった。だが、この作品では、中核となる人物に厚みが感じられ、そのことで、奇想もより生きた。

 壁を回転ドアのように使って場面を次々と変え、舞台では表現するのが難しい、同じ人間が複数いるという状況作りも、うまく工夫されていた。岩本幸子、窪田道聡らが共演。土岐研一美術、松本大介照明。(山口宏子)

 23日まで東京・赤坂レッドシアター。26〜30日に大阪でも公演。

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