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吉田都、ロンドンに別れ 最終公演の翌朝「号泣」

2010年5月24日

写真拡大ロイヤルバレエ団の吉田都=4月26日、阪内香氏撮影写真ロイヤルオペラハウスで最後の舞台に立つ吉田都=4月23日、ビル・クーパー氏撮影(C)ROH

 人と人に運命の出会いがあるように、街との出会いにも同じことがある。バレリーナ吉田都(44)は17歳でロンドンに留学し、そこで人生が変わった。英国ロイヤルバレエ団との最後の日本公演を前に、ロンドンとバレエ人生について聞いた。

 「空港に着いた日は天気が悪くて、グレーの印象。とにかく生まれて初めての一人旅。英語もろくにできず、行き先のメモをタクシーの中で必死に握りしめてました」

 幼稚園の友達の発表会を見て、バレエにあこがれた。1983年、ローザンヌ国際バレエコンクール入賞。ごほうびが1年の英国留学だった。

 「でもロイヤルバレエスクールの寮に着いたら、事務の手違いで部屋が空いてないんです。もう、パニック!」

 別の寮に入れたが、食事時間に遅れると食べさせてもらえない。「ぐだぐだに煮たグリーンピースとか、料理の見た目もこわくて」。ストレスで35キロまでやせた。

 欧米の娘たちのなんと美しい立ち姿。逆立ちしてもかなわない。コンプレックス、ホームシック。買い食いして、こんどは45キロまで太る。

 毎日、ひとの2倍練習した。1年後、英国のバレエ団から入団を誘われた。本音は東京に帰りたい。どうしよう。ふんぎりをつけられたのは母悦子さんの一言だった。「『だめだったら、いつでも帰っておいで』と。気が楽になりました」

 95年、世界3大バレエ団のひとつ、英国ロイヤルバレエ団に主役級として移籍した。表現力に磨きがかかった。

 「ロンドンの空気のおかげです。イギリス人と一緒に生活して初めて理解できたものがある。たとえば会話のときの自然な身ぶり。自分の部屋から舞台まで雰囲気がつながっているし」

 けがをすると、たちまち役を奪われる。毎日が真剣勝負。腰痛をだましだまし、笑顔で舞台に立ってきた。

 そんなロンドンに別れを告げる公演は4月23日。ロイヤルオペラハウスで「シンデレラ」を踊った。「ぶじに踊り終えることだけに集中しました」。ステップは軽く、ターンはだれより速く正確。「ミヤコー」「ミヤコー」。花が投げこまれ、歓声が満ちた。

 翌朝、贈られた花束の山を改めてながめた。「贈り主のカードを読むうちに、ぐわぐわっときて、もう号泣。闘いが終わったのかな、と」

 東京文化会館でのロイヤルバレエ団との共演は6月27、29日。チケットは完売。夏には札幌で子供たちを教えるセミナーが待つ。(ロンドン=橋本聡)

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