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オペラで、ミュージカルで「キャンディード」上演相次ぐ 新演出で新風

2010年6月3日

写真拡大前列左からジョン・ケアード、新妻聖子、後列左から市村正親、井上芳雄=小山内写す写真拡大「客席から笑い声がもれても、流れる音楽はどこか悲しさを秘めている」と話す佐渡裕=寺下写す

 レナード・バーンスタインの流麗な音楽が魅力の「キャンディード」が、ミュージカルとオペラで相次いで上演される。ミュージカルは英国のジョン・ケアードが演出し、2日に東京の帝国劇場で開幕。オペラは佐渡裕の指揮で7、8月に兵庫と東京で上演される。

 「キャンディード」は、18世紀の思想家ボルテールの哲学小説が原作。「ウエストサイド・ストーリー」の作曲家として知られるバーンスタインが曲を書いた。

 1956年にミュージカルとしてブロードウェーで初演されたが、わずか73回の公演で打ち切りに。だがその後、オペラとして上演されると評価が高まり、繰り返し舞台化される人気作となった。

 主人公は純真な若者キャンディード。男爵の城に暮らす私生児で、哲学教授パングロスから楽観主義を教わる。

 男爵の娘クネゴンデと恋に落ちるが、身分違いを理由に城を追い出される。彼女との再会を願って諸国を放浪するものの、戦争や地震、宗教裁判、嵐などの災厄が次から次へと降りかかる。

■ミュージカル 楽観と悲観の相克

 ミュージカルを演出したケアードは「音楽は素晴らしいが、初演当時は派手なショーに転じてしまい、おかしみを醸し出すシリアスさに欠けた。そこで私は、ほこりまみれの絵画をふき取って作品の修復作業をした」と語る。

 原作に立ち返って伝統や宗教に関する部分を細かく書き直し、楽曲も再構成した。初演時には楽観主義者パングロスと悲観主義者マーティンを同じ俳優が演じたが、ケアード版ではパングロスを市村正親が、マーティンを村井国夫が演じる。

 「ボルテールは楽観主義と悲観主義の相克をテーマに描いた。そこを明確にした。キャンディードは苦難を経て、自らの哲学をつくるに至る。その成長に重きを置いた」

 パングロスと狂言回しボルテールの2役を演じる市村は「とんでもないことが続く寓話(ぐうわ)のような話だが、ここに出てくる地震、戦争、宗教問題などは現実の社会でも起きている。よその事件のようでいて、自分の人生を見つめ直せる作品だ」と語る。

 キャンディード役の井上芳雄は「キャンディードは中心人物だが、人の話を聞いている場面が多く、感情は音楽で表現する。キャンディードとともに旅をしている気持ちで挑みたい」。

 クネゴンデ役の新妻聖子は「ブラックジョーク満載の大人の絵本。慌ただしさにとらわれず、きちんとしたキャラクターを提示したい」と話す。

 坂元健児、阿知波悟美らが共演。27日まで。電話03・3201・7777(東宝テレザーブ)。(小山内伸)

■オペラ 深さとユーモア結ぶ

 佐渡にとって今年は恩師バーンスタインの没後20年。それだけに格別の思いでオペラに向き合う。

 「キャンディード」はこれまで何度も指揮したが、作品の深さをユーモアと結びつけることに苦労してきた。その謎を解いたのが、今回の演出家ロバート・カーセンの舞台だった。作品のテーマを今日的な問題意識であぶり出す手法で「20年前から抱えていた『宿題』を解き明かした感覚だ」。

 カーセンの演出では、キャンディードは世界で最も幸福な城「ホワイトハウス」で育ち、映画スターにのし上がる女性を恋い慕う。巨大なテレビ画面を模した舞台で、チャンネルを替えるようにめまぐるしく場面が変わる。

 「アメリカンドリームへの皮肉だ」と佐渡。「テレビやインターネットの情報は物質的豊かさを夢見させる。でもそれらを手にすることが幸福か。社会がグローバルになったからこそ、違う価値観を知り、自分は賢いわけでも善人なわけでもないと気づく」

 欧州各地のオーケストラに招かれ、多様な宗教、文化、考え方の人間と出会う中で、考える。「いろんな人が、同じ地球で一緒に暮らしている。お互いの違いを認め合わない限り、レニー(バーンスタイン)が祈っていた平和は実現しない」

 物語は「我々の畑を耕そう」という歌で幕を閉じる。「畑は一人ひとりの仕事や人生。僕の場合は指揮だ。日々懸命に畑を耕す。それが、自分も世界も幸福になれる唯一の方法だと思う」

 公演は兵庫・西宮で7月24日から、東京は8月6日から。電話0798・68・0255(兵庫県立芸術文化センター)、03・3234・9999(チケットスペース)。(寺下真理加)

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