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エアあやや、エアビヨンセ 面白すぎて腹が立つ

2008年6月22日

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写真はるな愛さん

 あまりに面白くて、腹が立つ――。こんな形容矛盾を経験するのが、ニューハーフタレントはるな愛による「エアあやや」なる芸。辞書風に記せば、「アイドル松浦亜弥のものまねの一種だが、声は出さずにライブ音源を使った口パクで、振り付けから、表情、トーク、その間合いまでを、ほぼ完璧(かんぺき)にまねる芸」といった感じだろうか。

 この芸をテレビで見て、「そっくり」と笑い、「すっごいなあ」と感心した人も多いだろう。「エア」は、ギターの弾きまねをする「エアギター」と同じ使い方だ。

 もう一人、お笑い芸人の渡辺直美も「エアビヨンセ」と呼べる芸を見せる。ビヨンセが主演する映画「ドリームガールズ」で歌う様を、これも口パクでまねて、やはり感心させる。

 はるなは男性として生まれたわけだし、渡辺とビヨンセでは体形も違う。つまり、似ているはずもないのに似て見える。声色はまねないわけで、ちょっとずるい気もするが、そんなことも忘れるほどにだまされる自分に「腹が立つ」わけだ。

 ものまねタレントのコロッケも登場当初は「声帯模写」ならぬ、口パクの「形態模写」だった。ただ基本的に歌の部分だけをまね、鼻をほじるといったデフォルメがほどこされていたはず。対して今の二人は、誇張もあるが、語りやちょっとしたしぐさが絶妙。はるななら、吐息まで完璧なトーク、渡辺なら左右で歌う仲間たちを見やる表情。「使っている筋肉はビヨンセと全く同じ」とは、渡辺を推す先輩芸人の今田耕司の形容だ。

 生態心理学者で東京大教授の佐々木正人さんは、指摘する。「人は他人の身体に多数の動きの群れを見ているわけですが、その中のいくつかの動きの間の協調が、その人らしさを決定的に示しているといえます。息や表情も含め、どの動きとどの動きをピックアップしてまねるのか、が芸なのでしょう。『表面』の動きをまねる点が、2次元的というか、今ふうですね」

 そう、ポイントは動き。まさに「同じ筋肉を使っている」がゆえの説得力なのだ。

 粗製乱造の笑いが横行するなか、たいへんな鍛錬のたまものであることは確か。そこにひかれるのだ――、なんて理屈も言えるけど、まずは彼らの「形態模写」、いや旬の「動態模写」にしばし腹を立ててみたい。(大西若人)

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