人気ドラマ「北の国から」などの脚本家、倉本聰さんが再び北海道・富良野を舞台に新作「風のガーデン」を書いた。10月から、フジテレビ系で放送される。人間の生死を花の一生になぞらえ、生涯のテーマの家族愛を描く。富良野に住んで31年。「最後のドラマかもしれない」と考え、人生の最期を主題にした。現代のテレビへのアンチテーゼも込めてある。
紫、黄色、ピンク。彩りも鮮やかな英国式の庭を風が渡っていく。撮影のために富良野に2年をかけて造成し、四季の花々や紅葉、雪景色などは昨年に収録を終えた。ロケは終盤だ。末期がんの東京の麻酔科医が、絶縁していた北海道の家族の元へ戻り、最期の時をここで過ごす。
「草花が咲いて散る。また違う花が盛りを迎える様は生死そのもの。僕も73歳。最期を誰とどう過ごすか。好物を断って病院で死ぬのはイヤ。『北の国から』は34万本のマイルドセブンと1300本のジャックダニエルで書き上げた。いかに苦しまず死ぬか。そこから麻酔科医に至った」
取材と執筆で根を詰め、精密検査を2度受けた。「連続ドラマの執筆はこれが最後かもしれない」と言う。
家族を繰り返し書いてきた。時に弱く、互いに欠点をさらし、きずなを深める。今回の主人公(中井貴一)は女性遍歴があり、家庭を顧みなかったが、最期は家族に囲まれる。
「人間は他人と感動を共有する。最も近い所に家族がいる。昔はその中心にあったテレビが個室に入り込んで家族が崩れ始めたように思う。家族とテレビを見直したい」
カメラアングルや音楽も定めた脚本。長期の撮影。独白調で進む物語は、様々な倉本作品に共通する。今回は主人公の息子(神木隆之介)が花言葉をキーワードに一人語りを展開し、主人公の死は娘(黒木メイサ)の記憶の中で、過去形で語られる。
「ピークの場面を正面から描くと幼稚になる。少し手前や後を描くと間(ま)が余韻につながる。完全な作品が出来たと思ったことはないですが」
私財を投じて俳優や脚本家を育てる「富良野塾」を25年間主宰。テレビや携帯電話から離れ、演劇公演や農作業で生活費を稼いで2年間、創作について考える。300人以上が卒業したが、再来年には閉じる。
「疲れた。テレビのためにライターや俳優を育てたが、投げた球をテレビは受け止めてくれない。質の悪い商業主義的視点で役者と言えない人間を起用する。若い世代との間にズレが生じて、仲間の扱いをしてもらえなくなったこともある」
半世紀をテレビにかかわった。幻滅は愛情の裏返しなのだろう。
「僕らテレビ創成期からの人間は知恵を使った。今は知識だけで、程度の低いギャハハ番組ばかり。公共の電波で悪影響を及ぼすのは犯罪。広く浅く、面積だけを稼ぐ視聴率ではなく、質と深さを測る方法論を考えよと言い続けたが、変わらない」
重鎮の怒り。テレビ界は、どう受け止めるのか。(柏木友紀)