民放の秋の番組改編で、二つのドキュメンタリー番組がゴールデンタイムに登場する。TBS系は関口宏を司会に迎え、初回は米国の格差問題に切り込む。テレビ朝日系はリポーターの長野智子が案内役となり、ニュースの裏側に迫る。視聴率がとりにくいとされるドキュメンタリーだが、定着できるか。
TBS系で10月15日に始まるのは「水曜ノンフィクション」(水曜午後9時)。お笑い番組など派手な番組が並ぶゴールデン帯は、本格ドキュメンタリーほど地味に映る。そこで「見せ方を工夫したい」(南部雅弘チーフプロデューサー)と、スタジオに専門家や当事者を招き、関口が突っ込んだ対話もする予定だ。
初回は2時間特番。論戦が本格化する米国大統領選に合わせ、米国で深刻化する貧困問題を現地取材で報告する。
今年度前半、全日帯(午前6時〜午前0時)の平均視聴率が4位にとどまっている同局は、ゴールデン帯で4割超の番組を入れ替える「必然的な大改編」(吉崎隆編成局長)をした。12年ぶりにドキュメンタリーをゴールデン帯に置くのも目玉の一つだ。
テレビ朝日系は11月3日から「報道発 ドキュメンタリ宣言」(月曜午後7時)を始める。初回は自民党総裁選後の政局などもテーマに想定している。原一郎チーフプロデューサーは「総選挙なら候補者本人でなく陣営スタッフに注目するなど、ニュース番組と違う切り口で攻めたい」と話す。系列局から地方発の話題も充実させる。
今年、数回放送した単発ドキュメンタリーが視聴率12.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)などと好調だったことも後押しした。板橋順二編成部長は「人間を真剣に描いた番組を見たいという視聴者の要望を感じた」と話す。
いずれも、「ゴールデンタイムに中高年が見たい番組が少ない」(テレ朝・原プロデューサー)ため、「大人に良かったと思われる番組」(TBS吉崎局長)をめざす。
確かにドキュメンタリーへの熱いニーズはあるようだ。70年から深夜帯で「NNNドキュメント」を放送し続ける日本テレビは今夏、過去の作品を1日7〜8本取り上げ、鑑賞してもらうイベントを開いた。コーナーは立ち見が出るほどで、同局も「手応えを感じた」という。
民放にドキュメンタリーが少ない理由を、キャスターの鳥越俊太郎さんは「制作費がかかる割に視聴率がとれないから」と言い切る。かつてゴールデン帯のレギュラー番組だった鳥越さんの「スクープ21」(テレビ朝日系)も今は年数回だけ。「プロデューサーに高いコスト意識が求められ、厳しい時代。だが、高い志を持つ作り手も少なくない。時代の流れを見つめ、事件や出来事の背景に迫ってほしい」とエールを送る。(赤田康和、村瀬信也)