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地デジ、お宅は大丈夫?完全移行まで2年、普及に問題も

2009年7月25日

 地上デジタル放送(地デジ)の完全移行まで残り2年となり、政府や放送界は地デジ普及率向上に向けた「総力戦」に入る。石川県内で24日、全国初の休止実験が行われた。実験は無事に終了したものの、「本番」に向け、地域格差やビル陰の難視対策など乗り越えなければならない壁は多い。 

 24日午前10時になると同時にアナログ放送が止まり、テレビ画面は青一色の「お知らせ画面」に切り替わった。

 石川県珠洲市と能登町の一部で行われた休止実験では、まだデジタル対応していない推計約1300世帯のテレビが、番組休止を経験した。珠洲市の全世帯の約2割にあたる。

 ただ、平日の昼間で視聴者が少なく、珠洲市の事前説明会や地元放送局の予告放映で大半の市民が実験を知っており、大きな混乱はなかった。

 総務省は実験「第2弾」として、来年1〜3月に同じ地域で「丸1日」アナログ放送を休止させる。来年6月にも全国に先駆けて同地域の完全停波に踏み切る予定だ。それに伴い、地元の要望もあって、アナログで視聴している全戸に、デジタル放送が見られる簡易チューナーを配る方針だ。

 もっとも、実験の狙いは11年7月24日に予定される全国一斉停波に備え、どんなトラブルが起きるのかを知ることにある。ある放送局幹部は「トラブルを事前に把握するという実験の意義がなくなってしまう」と漏らす。「無難な滑り出し」を目指すあまり、痛しかゆしの感はある。

■政府・放送界も総力戦

 「地デジ移行によって、デジタル・デバイド(情報格差)が発生するのは、なんとしても避けなくてはならない」。河村官房長官は24日、都内で開かれた「デジタル放送完全移行推進の集い」で、あいさつした。

 米国は6月に地デジに移行した。政府は経済危機対策に、総額3600億円もの地デジ対策費を盛り込んだ。デジタルテレビの購入支援に1950億円、公共施設のテレビ買い替えに1500億円、送受信対策に150億円だ。

 秋口から、集合住宅を対象に改修費用が一定額を超えた場合、半額を国が補助する支援を開始。簡易チューナーの無償配布は当初、生活保護受給者(約120万世帯)だったが、NHK受信料の全額免除世帯(最大260万世帯)に対象範囲を広げる。

 放送事業者も、総力戦の様相だ。中継局のデジタル化工事などで民放は計1兆円強、NHKは5125億円を投じる予定だ。

 放送局が必死なのは、自らの財布事情も大きい。11年のアナログ放送終了を見越して、アナログ用放送機材の更新や改修費用を抑えている。もしアナログ停波が延期されれば新たな費用が発生し、収益の圧迫要因になりかねない。NHKの福地茂雄会長も「アナログ放送の維持費は年間六十数億円。終了時期が延びれば大変だ」と危機感を隠さない。

 もっとも、完全移行へ不安がすべて解消されているわけではない。

 地デジ受信機の普及台数は今年6月で5384万台と目標を上回った。普及率も3月末で60.7%とほぼ目標値まで上がった。だが、「地域格差」は大きい。

 全国で最も低い沖縄県の受信機普及率は37.1%で、トップの福井県(68.6%)の約半分。岩手県(47.4%)や長崎県(48.5%)も低水準だ。面積の広さや離島や山が多いといった地理的な条件が原因の一つとされ、地域条件に応じた追加の公的支援が必要になる可能性も高い。

 都市部の集合住宅の屋上の共同アンテナでも、改修工事の遅れが目立つ。地デジ受信にはUHFアンテナが必要だが、首都圏ではVHFアンテナが中心。新たにUHFアンテナが必要になる場合が多い。

 ビルの陰でテレビの画面が見にくい「難視」の世帯も課題だ。こうした難視を解消する共同アンテナは全国に5万施設(606万世帯)あるが、デジタル対応率は11.4%どまり。「難視の原因をめぐって関係者の利害が対立するし、費用負担に話が及ぶとさらにこじれる」(関係者)ためで、解決にはまだ時間がかかりそうだ。

 地デジ便乗の詐欺的な悪質商法も後を絶たない。国(総務省)や放送局、工事業者を装って工事を勧誘し、法外な代金を請求する事例が各地で起きている。総務省が把握しているだけでも被害は04年以降で35件。半数は被害者が高齢者だ。

 主婦連合会の河村真紀子事務局次長は「地デジを視聴する対策は各家庭で異なり、技術も難しい。高齢者がつけ込まれやすく被害も表面化しにくい」と話す。(橋田正成)

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