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〈回顧2009〉今年の放送を振り返る

2009年12月15日

■広告不況 番組への影響懸念

 未曽有の広告不況が民放の経営を直撃した一年だった。在京キー局の2009年9月中間決算は全社が減収。収益の柱だったCM収入が軒並み大幅に減少し、TBSは最終赤字に転落した。

 テレビ朝日の年間150億円など各局は番組制作費を大幅カット。制作費が安価な生放送の帯番組が増え、タレントから局アナへのレギュラー交代などの影響が出始めた。

■力作「JIN」「坂の上の雲」

 苦しい中でも力の入った作品はもちろん出ている。幕末にタイムスリップした脳外科医をリアルに描く「JIN―仁―」(TBS系)は複数回、20%台の視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録。小学生の殺人事件をテーマにした「アイシテル 海容」(日本テレビ系)も右肩上がりに評価を高めた。

 しかし、地盤沈下を指摘する声は多い。丸山タケシ氏は「見たい番組がなく、テレビを消す日がここ10年で一番多かった」。坂本衛氏は、酒井法子容疑者や市橋達也容疑者など興味本位の事件報道が高視聴率だったことを挙げ、テレビの貧困を指摘する。制作費削減の制約のなか、新たな表現をどう切り開いていくかが一層問われそうだ。

 「受信料の10%還元」を掲げた経営計画の初年度を迎えたNHKにも、景気低迷の影響は出ている。生活保護世帯の増加などで受信料収入は計画より下ぶれしそう。番組では強さをみせ、大河ドラマの「天地人」は21.2%の平均視聴率でドラマの年間1位。制作に3年、放送に3年をかける大作「坂の上の雲」の放送も11月に始まり、話題を集めた。NHKスペシャルなどでも力作を送り出した。

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の活動が目立った年でもあった。日本テレビの「真相報道バンキシャ!」は、虚偽の証言を元に岐阜県の裏金問題を報じ、当時の久保伸太郎社長が引責辞任。BPOは検証番組の制作を勧告し、取材姿勢を厳しく批判した。TBSの「サンデー・ジャポン」にも「重大な放送倫理違反」を認定した。

 NHKには、従軍慰安婦問題を扱った01年の番組について、政治家への事前説明が「いまも繰り返されうる」と指摘、福地茂雄会長は「今後は一切しない」と明言した。苦情が多いバラエティー番組については、番組作りの指針を民放連に作るよう提言する異例の意見書を出した。

 政権交代の影響も大きい。原口一博総務相は「表現の自由」を守るため、政治家や総務省などの「権力」が番組内容に介入することを監視する「通信・放送委員会」の設置を表明。今後の放送界の行方を左右しそうだ。

 11年7月24日の地上デジタルへの完全移行が、円滑に進むかどうかも今後の課題。11月公表の世帯普及率は69.5%と、目標の72%に届かなかった。各局は「地デジ後」の「放送・通信」の融合時代を見据え、番組のネット配信を加速。フジテレビがCS放送向けに初の連ドラを制作したり、ケータイドラマを年末に地上波で放送することを決めたりするなど、多メディア時代をにらんだ新しい動きもでつつある。(丸山玄則)

    ◇

私の3点 選者50音順(敬称略)

坂本衛(ジャーナリスト)

▽NHKスペシャル「シリーズ JAPANデビュー 第1回 アジアの“一等国”」

▽総選挙の各局開票速報(特に24時間テレビのマラソン効果で高視聴率だった日本テレビ)

▽夕方情報ニュースほかの犯罪報道(酒井法子容疑者など)

丸山タケシ(テレビ評論家)

▽「ありふれた奇跡」(フジテレビ)

▽「深夜食堂」(TBS)

▽NHKスペシャル「“35歳”を救え あすの日本 未来からの提言」

水島久光(東海大教授・メディア論)

▽「50時間テレビ ロンドンハーツスペシャル 第1部」(テレビ朝日)

▽「最後の赤紙配達人」(TBS)

▽「空から日本を見てみよう」(テレビ東京)

=キー局を表記

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