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五輪中継、民放は赤字覚悟 CM低迷、放映権料ズシリ

2010年2月10日

 12日(日本時間13日)開幕のバンクーバー冬季五輪、6月開幕のサッカーワールドカップ(W杯)南アフリカ大会――。スポーツの祭典が相次いで開かれる。話題の競技や試合の中継をめぐり、テレビ各局は活気づく。だが一方で、CM収入は低迷が続き、多額の放映権料のために収支が赤字に終わる恐れも出ている。

 昨年12月半ば、東京都千代田区の日本民間放送連盟事務局。在京民放キー局の幹部社員らが、サッカーW杯の放送枠を振り分ける抽選会に集まった。目当ては高視聴率が確実な1次リーグの日本戦だ。

 くじを引く順番を決める予備抽選の後、いよいよ本抽選。箱から選びとったボールを割ると、中の紙に数字が書かれている。

 「1番」「やった!」

 ゴールデンタイムの対オランダ戦を引き当てたテレビ朝日の社員たちが歓声をあげた。くじを引いた板橋順二編成部長は「2006年の日本戦の視聴率は52%。その上を目指す」と満面の笑み。一方、はずれた他局は「何を言っても負け惜しみになる」とうなだれた。

 W杯や五輪の放映権は、民放とNHKが共同で買っている。W杯は民放とNHKの分担を話し合いで決めたあと、民放の試合ごとの割り当てをくじで決める。試合によって視聴率の差は大きい。験担ぎにお宮参りをするくじ引きの担当者もいる。

 夏冬の五輪は原則として話し合いで放送枠を決める。人気の高い競技をめぐって民放やNHKの担当者同士が激しく言い争うことも多いという。

 民放とNHKの放映権共同購入は、夏季五輪は76年のモントリオールから始まった。冬季五輪は98年の長野、W杯は02年日韓大会が最初。いずれも民放が参入を強く求め、NHKが受け入れた形だ。

 だが今、民放経営陣からはぼやきが漏れる。「五輪やW杯に、以前のようなうまみは期待できない」。民放役員の一人はそう話す。

 W杯の抽選会の1週間前。民放連の広瀬道貞会長は、京都市で開かれた国際公共放送会議の席上で「五輪の放映権料はあまりにも高い」と国際オリンピック委員会(IOC)への不満をあらわにした。「回を追うごとに20%から30%高い放映権料を要求してくる。IOCはスポーツよりお金に関心が強いのでは」と非難した。

 民放とNHKがIOCに払った放映権料は、夏季五輪は00年シドニーに1億3500万ドル、04年アテネに1億5500万ドル、08年北京に1億8千万ドル。冬季は02年ソルトレークに3700万ドル、06年トリノに3850万ドル。ともに値上がりが続く。

 W杯は金額は非公表だが、値上がりは同様だ。国際サッカー連盟に民放とNHKが支払った額は推定で、02年日韓大会で約63億円、06年のドイツ大会で約140億円。今年の南アフリカ大会は約170億円にのぼる。

 一方で広告収入は、不況の影響もあって低迷が続く。民放各局の決算発表の記者会見では、バンクーバー五輪関連のCMの売り上げに話が及ぶと、営業担当の役員は一様に「厳しい」と答える。

 民放関係者によると、バンクーバー五輪と12年のロンドン五輪は円建ての計325億円で一括して契約した。バンクーバー分は約60億円で、このうち民放は約20億円を負担している。各局は総額で40億円のCM売り上げを見込んだが、実際の売り上げはこれを割り込む情勢だ。

 これまで五輪中継は夏冬ともおおむね黒字だった。しかしこの調子だと、放映権料に加えて制作費などを差し引くと、バンクーバー五輪の中継は赤字となる可能性が高いという。00年のシドニー五輪であげた総額約20億円の黒字など夢物語だ。

 スポーツとメディアに詳しい多摩大学の江頭(えとう)満正客員准教授は「米国では公式スポンサー企業から巨額のCM収入が見込める上に、テレビ局のブランドイメージが高められるので、五輪の放映権獲得競争が過熱してきた。これが、放映権料全般の相場を引き上げている」と指摘する。

 NHKで五輪中継を長年手がけてきたスポーツプロデューサーの杉山茂さんは「このままだと民放が撤退し、NHK中心の体制に戻ることも予想される。有料放送が参入し、視聴料を払わないと見られない競技が出てくることもありうる」と話している。(寺下真理加)

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