原油価格がここ1年半で2倍近くになり、史上最高値圏で推移している。8月末に史上初の1バレル=70ドル超を記録し、現在も65ドル程度の高水準だ。にもかかわらず、日本経済は70年代に2度経験した石油危機のような状態にはなっていない。それは、なぜなのか。原油高に対して、どこまで持ちこたえられるのか。
第2次石油危機時の原油価格のピークは80年の1バレル=43ドル弱(中東産原油)。渡辺浩志・大和総研エコノミストは「為替水準や物価などを勘案して今の価格に直せば140ドル程度になる」と試算する。つまり現在の70ドル弱の水準なら、石油危機時の半分の衝撃で済んでいるとの見方だ。
80年代半ば以降に急速に円高ドル安が進み、原油の円建て輸入価格が80年の6割程度になっていることが大きいい。
レギュラーガソリンの店頭価格も当時よりまだ安い。80年当時は1リットル=155円だったが、現在は全国平均で130円強(税込み)だ。当時より所得は大きく伸びているが、近年のデフレ経済の影響もあって物価は比較的落ち着いている。原油高が値上げにつながっても、生活実感に与える影響は危機当時より軽いとみられる。
「計算上は1バレル=100ドルになっても景気は腰折れしない」。阪上亮太・野村証券金融経済研究所エコノミストはそう分析する。
日本の原油輸入額は04年度で約6兆円。原油価格が1割上がると6000億円増加し、実質国内総生産(GDP)を0.12ポイント下げる計算だ。飯塚尚己・第一生命経済研究所主席エコノミストは「現在の価格水準なら05〜06年度に0.2〜0.4ポイントの引き下げ要因でとどまる」という。
05年度は2%弱の成長が見込まれており、原油高の影響が出てもプラス成長維持は十分可能だ。
懸念されているのは、ガソリン消費が大きい米国と、原油輸入量を急増させている中国の経済への影響だ。日本の2大貿易相手国である米中経済が失速すれば、日本も輸出産業などを通じて打撃は避けられない。そうなれば世界的な株安となって、世界経済全体が沈む事態も想定される。
みずほ総合研究所の試算では、1バレル=70ドルが続けば米国の実質GDPを1.2ポイント押し下げる。同総研の吉田健一郎エコノミストは「米国経済は現在は住宅価格の上昇で資産が増えているので、原油高の影響を相殺できている。だが、この状態が続くとは思えない」と心配する。
日本経済にしても、為替水準が大きく円安ドル高にふれれば原油高の影響は一気に膨らむリスクを抱えている。