自治体の建築確認も偽装を見逃していた。耐震強度の偽装問題で、神奈川県平塚市のホテルでも構造計算書が偽造された疑いが高いことが新たにわかった。利用者や居住者の安全を守るはずの建築確認が、官民を問わずチェック機能を果たしていない実態が明らかになった形だ。
建築確認は建築基準法の改正に伴い、99年から自治体の建築主事に加えて、民間の指定確認検査機関も確認業務ができるようになった。
官民いずれも申請書類による建築確認、完成時の完了検査、そして必要に応じて建設途中の中間検査を行う。昨年度の確認件数は約75万件。自治体分が約33万件に対して民間機関が約42万件と、制度開始以来初めて民間が自治体を上回った。民間は122機関と急増している。
国土交通省などによると、民間機関を導入した背景には、自治体の建築主事が不足して十分な検査態勢がとれないという実態があった。法改正段階で自治体の建築主事は全国で約1800人しかおらず、1人あたり年間約600件の建築確認・検査を担当。確認業務が遅れがちになり、完了検査の実施率も低かった。こうした実態を踏まえて民間機関も審査できるようにし、検査態勢の充実を図った。
建築主事の審査能力を高めようと、この時の法改正では建築主事の資格検定制度を改め、建築物の審査業務について2年以上の実務経験がある1級建築士しか受検できないようにもした。昨年3月時点で建築主事は1905人いる。
それでも実際には建築主事以外の職員が受け付けや審査を担当し、建築主事が統括的にチェックしていることが多いとされる。こうした事態を建築や設計の現場で働く人々は比較的冷静に受け止めている。
北海道に住む30代の1級建築士は、自分が構造設計を担当したマンションの建築確認が申請された自治体の担当者から、建物の細かいデータや強度の計算結果ではなく、構造の基礎的な知識などを聞かれて驚いたことが何度もあるといい、「こちらの都合のいいように説明できてしまう。審査とはいえないと思った」と話す。むしろ、民間の指定確認検査機関の担当者に、専門家が多い印象を受けるという。
建築技術支援協会(代表理事・和田章東工大教授)が21日に東京で開いた緊急集会でも、参加者から「民間機関だから文書偽造が見抜けなかったという問題ではない」といった意見が相次いだ。ある参加者は「官民を問わず、制度自体の見直しが必要ではないか」と訴えた。