耐震強度の偽装問題で、国がまとめた分譲マンション住民への公的支援策などによって建築主らが当面負担しない費用について、国土交通省が「不当利得」にあたるとして返還請求を検討していることがわかった。ただ、今回の支援策は「緊急性と公益性が高い」と大急ぎで決めただけに、どうやって建築主らに負担を求めるか、法的根拠は詰めきれておらず、法務省など関係省庁と今後、協議を重ねる。
「不当利得」は、契約などがないのに、ある人物が他人の財産で利益を受け、一方で他人が損失を被ることを指す。その場合、損をした他人は、得をした人物に対して、利益を返すよう求めることができる。
今回まとまった50億円規模の公的支援で、建築主のヒューザーや姉歯秀次建築士は、建物の解体費用など本来負担するはずとされる費用をいったん免れる。国交省はこれを不当利得ととらえて、責任追及を目指すことを検討している。
ただ、国交省によると、行政側が「公益性が高い」と判断して支出した公費について、不当利得返還請求をした事例は少ないという。同省の担当者は「裁判で争う場合、主張の仕方が難しい点がある」と認める。
返還を求める別の方法として、自治体などが、住民の補償請求権を買い取って建築主などに支払いを求める「求償権」という考え方もある。ただ、住民が独自に補償を求める権利を制限する恐れもあり、北側国交相は「容易でないと思う」と話している。
また、6月の最高裁決定で「建築確認は自治体の事務」との判断が出ており、今回の場合、住民への賠償責任が、結果として偽装を見逃した自治体にも及ぶ可能性がある。こうした事情も踏まえて、自治体に交付すべき補助金を削減するという方法も浮上している。補助金の減額分は、自治体がヒューザーや姉歯建築士らにも分担させるという手法だが、建て替え事業の足を引っ張るとして、自治体や住民の反発を招く恐れもあり、国交省は慎重だ。