3年越し捜査実る、前福島県知事逮捕
2006年10月23日23時03分
「この1億円は変だ」。03年、中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)のリベート疑惑を調べていた国税当局は、購入代金が後から1億円上乗せされるなど、同社が福島県郡山市内の土地を買い取った取引に注目したという。検察当局も、佐藤栄佐久・前知事の実弟の会社が絡むこの土地取引を知り、汚職の疑いがあるとみて内偵捜査を始めた。
東京地検特捜部は05年12月、助成金を不正受給した疑いがあった建設会社の関連先として、水谷建設を捜索。その半年後の今年7月には、東京国税局と連携し、法人税法違反(脱税)容疑で水谷建設への強制捜査に踏み切った。関係先を広範囲に捜索する中に、前知事の実弟の佐藤祐二容疑者(63)が社長を務めていた縫製会社「郡山三東スーツ」も含まれていた。
「スーツを作る会社が、ゼネコンから資金提供を受けるのは不自然だ」。当初から検察幹部らは、三東スーツをめぐる土地取引に疑惑の目を向けていた。
特捜部は、水谷建設の脱税事件をステップとして、福島県発注の公共工事をめぐる談合事件の捜査に着手。佐藤前社長が、受注調整の仕切り役を務めていた実態を突き止めた。
さらに、04年9月の知事選をめぐり、佐藤前社長が、ゼネコン側から提供された裏金を選挙資金に使っていた実態も明らかになった。
土地取引をめぐっては、前田建設工業や水谷建設の関係者から、土地取引などが、大型ダム工事を受注できた謝礼として仕組まれたものだったとの供述を引き出すことに成功した。
一連の捜査の原点とされる土地取引疑惑。3年越しの捜査が実り、23日、前知事の収賄容疑での逮捕に踏み切った。
◆知事が逮捕・立件された主な事例(呼称略。竹内元知事以外は有罪が確定)
76年8月 福島・木村守江 土地開発での収賄容疑で逮捕
12月 岐阜・平野三郎 入札指名に絡む収賄容疑で在宅起訴
92年9月 新潟・金子清 佐川急便グループからのヤミ献金、政治資金規正法違反で在宅起訴
93年7月 茨城・竹内藤男 ゼネコン汚職、収賄容疑で逮捕、公判停止中に死去
9月 宮城・本間俊太郎 ゼネコン汚職、収賄容疑で逮捕
99年12月 大阪・横山ノック 女子大生への強制わいせつ罪で在宅起訴
02年3月 徳島・円藤寿穂 県発注の公共工事をめぐる収賄容疑で逮捕
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