現在位置 : asahi.com > ニュース特集 > 福島県汚職 > 記事 ここから本文エリア

福島前知事の弟、土地取引を自ら要求 調整結果を県に

2006年10月24日15時09分

 福島県発注のダム工事をめぐり、収賄容疑で逮捕された同県前知事・佐藤栄佐久容疑者(67)の実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)が、受注調整の見返りとして、土地購入や融資を準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京都千代田区)に要求していたことが、東京地検特捜部の調べでわかった。佐藤前社長が、前田建設工業に落札させる方針を事前に県に伝えていたことも判明。官製談合の中で、前社長が知事実弟の立場を利用して利益を得ていた形だ。

 特捜部は、前知事が、前社長主導の一連の取引に関与していた実態の解明とともに、前知事が実弟の受注調整を認識していた疑いがあるとして調べている。

 関係者によると、佐藤前社長は99年ごろ、前田建設工業幹部から、同県発注の「木戸ダム」(同県楢葉町)建設工事の受注への協力を頼まれた。知事の弟として業者選定に発言力を持つ前社長はこれを受け、前田建設工業が落札予定会社に選ばれるよう、ゼネコン各社の受注調整に介入したという。

 特捜部の調べでは、前社長は同年、前田建設工業に対し、三東スーツが工場従業員用の駐車場として使っていた同県郡山市内の土地約3万平方メートルを購入するよう要求。このため前田建設工業は、ダム工事で下請け業者に入れる予定だった中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)に、土地購入を指示した。同社は同年11月、この土地を約3億5000万円で購入した。

 前社長の支援を受けた前田建設工業などの共同企業体は、県が00年8月に行った木戸ダム工事の入札で、約206億円で落札した。

 前社長は落札後、前田建設工業に三東スーツへの融資も依頼。前田建設工業と子会社は01年に計4億円を融資した。

 前田建設工業副会長(当時)は02年にも、前社長の要求を受け、水谷建設副社長(同)に別の土地購入を指示した。同社は同年8月、三東スーツの本社工場用地約1万1000平方メートルを約8億7000万円で購入。さらに前社長の要求に従う形で、03年2月までに購入代金を1億円上積みした。

 一連の取引は三東スーツの経営難解消が狙いで、02年の土地購入は、前社長が従業員の退職金などを積算し、約10億円での購入を要求したという。

 前田建設工業と水谷建設の関係者は特捜部の調べに、一連の取引が前社長からの要求で行われたもので、受注調整の謝礼だったことを認めているという。

 一方、前社長は00年8月の入札前、木戸ダム工事の受注調整の結果、前田建設工業が落札する予定になったことを、県側に伝えていたという。

 前社長らが競売入札妨害の罪に問われた広域下水道工事の談合でも、前社長が了承した受注調整の結果が、県OBを通じて県土木部の入札担当者に伝達されていたことが判明。県側が長期間にわたり、前社長による受注調整を黙認していた疑いが持たれている。

PR情報


この記事の関連情報


ここから広告です
広告終わり

マイタウン(地域情報)

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.