佐藤前知事、93年まで「天の声」 汚職事件機に中止
2006年10月25日08時14分
福島県発注の工事をめぐり収賄容疑で逮捕された同県前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)が、93年ごろまで、工事の入札前に発注者が受注業者を指名する「天の声」を出していたことが、関係者の話でわかった。同年のゼネコン汚職事件を契機に天の声をやめ、代わりに実弟で「郡山三東スーツ」前社長の佐藤祐二容疑者(63)が談合の仕切り役を務めるようになったという。東京地検特捜部も関係者から同様の情報を得て、贈収賄事件の背景事情として調べている模様だ。
佐藤前社長は、知事の弟としてゼネコン各社に強い影響力を持っていたため、前社長の業者選定が、実質的に県側の「天の声」として受け止められていたという。
しかし、90年代初めの時期までは、仙台市を拠点とするゼネコン東北支店の談合組織に対し、同県発注工事の受注業者を指名する、前知事自身の意向が伝えられることがあったという。
その後、93年に特捜部がゼネコン汚職を摘発し、当時の仙台市長や宮城県知事などを次々と逮捕した。この事件では、ゼネコン各社の役員が、自治体首長に直接面談し、工事の受注希望を伝えていたことが明らかになった。
この事件をきっかけに、福島県では前知事による「天の声」が出されることがなくなった。代わりに、実弟の前社長が、ゼネコンの受注調整に介入し、発言力を強めていったという。
また、前社長から県OBなどを通じて、県側に受注調整の結果が伝えられ、県側は落札予定社が入札指名から外れないよう配慮していたという。
贈収賄事件の対象工事となった、準大手ゼネコン「前田建設工業」(東京都千代田区)の共同企業体が、00年8月に約206億円で落札した「木戸ダム」建設工事でも、前社長が同社の依頼を受け、落札できるように受注調整していたことがわかっている。
特捜部は、同県発注工事をめぐる受注調整の実態を調べる中で、こうした経緯を把握した模様だ。このため、前知事が、前社長による受注調整を十分に認識し、関与していた疑いがあるとみて調べている。
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