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放逐のタクシン氏、揺れる地元 タイ・チェンマイ

2006年09月27日12時10分

 タイ軍部のクーデターで放逐されたタクシン前首相の出身地チェンマイでは、首都に比べて空港や街角に軍服姿が目立ち、多くのラジオ局が閉鎖された。軍が親前首相派の動向に気を使っているのだ。政変の不当性を声を潜めて訴える人がいる一方「腐敗した政権だったから仕方ない」と軍を支持する変わり身の早い人も多く、世論は割れていた。

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前首相の肝いりで建設されたナイトサファリ。クーデターの影響もあって、広い施設に客はまばらだ=チェンマイで

 中心部から車で約30分走ると、140万平方メートルのナイトサファリが忽然(こつぜん)と現れる。約50億円の国費を投入して2月にオープンした。首相府直轄の典型的な地元利益誘導例だ。前首相が外遊中にケニア政府と直談判して動物の輸入を決め、愛護団体の反発を招いたこともあった。

 クーデター翌日は閉鎖となり、その後外国人客は減ったという。

 園内に人影は少ない。1日3000人の客を見込んだが、一部未完成でもあり、目標の半分がやっとという。

 2度目の来園という地元の主婦ポーさん(38)は「クーデターなんて信じられなかった。この立派な施設も前首相のおかげ。早く帰ってきて欲しい。支持を続ける」。

 街はずれに前首相の生家がある。今は一族が経営するシルク製品の売り場になっているが、客はいなかった。店番をしていたおばは政治のことは話したくないという。

 近くでそば店を営むチャーイさん(75)は前首相の特大の写真を店に掲げる。前首相の父親のコーヒー店近くにそば店があり、前首相は小学生時代、毎日、食べに来た。

 「首相になってからも店に来て、私にそばを作ってくれた。おじさんはずっと作ってくれたから今日は僕が、ってね」

 失脚について聞くと、「軍が聞いているかもしれない」と声を潜めて「汚職なんて絶対にうそ。まじめでやさしい子なんだ」と熱い口調だ。

 県の人口163万人、有権者116万人のうち、タクシン政権与党のタイ愛国党の党員は30万人を超す。98年に設立され、過去3回の下院選(定数10〜12)で失ったのは01年の1議席だけ。

 軍は北部17県のラジオ局の放送を禁じた。愛国党の政治家が一部の局を運営していたからだ。

 地元のジャーナリスト協会の代表、テルツァックさん(39)は軍に抗議したが、決定は覆らなかった。「軍には抵抗できない。暴力が伴ったかつてのクーデターに比べればましと思うしかない」

 選挙ではタクシン支持だった。当時は逆に愛国党の悪口を言おうものなら、襲撃された。どちらもどちらだと思う。

 「人々はもう心を切り替えている。前首相本人には能力があったが、取り巻きが悪かった」

 チェンマイ大学で学生や講師に聞くと、大方は軍の行動を支持した。法学部に通うタエさん(20)は「前政権の腐敗体質には閉口していた。地元だから前首相を支持する人はいるが、そのうちに無血の政変の意味を理解するはず」と話した。

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